内容説明
日本が世界に誇る詩劇・能を大成した世阿弥は夢幻能の様式を確立するとともに、多くの芸術論を残している。「秘すれば花なり、秘せずば花なるべからず」の名言を含む『風姿花伝』をはじめ、『花鏡』『拾玉得花』などの著作があり、テーマも稽古論、演技論、演出論と多彩である。また『高砂』『敦盛』『井筒』など優れた能も残している。それらの中から世阿弥の肉声を取り出し、世阿弥の中心課題である「花」の理論を明らかにする。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
お抹茶
2
世阿弥の遺した言葉を紹介。多くのレパートリーを必要とした状況では,下手の芸でも優れていれば手本とし,自らの芸とすることが求められた。「初心」は各年齢にふさわしい芸を修得した者にもあり,幾度も積み重ねられるもの。物まねはまず対象をしっかり見つめ,その姿を捉えるという,物事の根幹を理解する能役者としての基本的姿勢。「妙」は意識を伴わない純粋な感動である無心の感と一体。観客の前でその場にふさわしい新しい芸を現出することを「住するところなきを,まず花と知るべし」と表現した。2017/09/15
黒うさ
2
一回読んでスッと入ってくるものではなく、何度も読み返す本だなとの印象。だが、世阿弥の言葉は現代にも通用すると感じた。千早茜の『男ともだち』で、花伝書が出てきたので興味が湧いて読んでみた。2016/10/25
残心
0
「住するところなきを、まず花と知るべし。」(停滞することがないことこそが、まず美しい「花」を現出させる条件であることを心得ておくべきです。) 世阿弥の著書などから要所をピックアップして解説してくれている。 所々に一般に通じる真実があるものの、やはり芸能に関することがほとんどであり、個人的には世阿弥の著作を読み進めようとは思わなかった。2016/07/31