内容説明
『怪談』で知られる小泉八雲こと、ラフカディオ・ハーン。親の愛を知らずに育ち、イギリスから単身、アメリカに渡った彼は、極貧生活の果て、原稿料を稼ぎにルポライターとして来日した。時は明治、鉄道の時代。横浜から始まり、日本各所で暮らし、やがて帰化――そんな彼を日本に惹きつけたものは何だったのか? 「へるん先生」と親しまれた男の軌跡を辿る中で見えてくる、“日本魂”を再発見!
目次
序章 津波
第一章 アムトラックの車窓から――ニューヨークからシンシナティへ
第二章 わが青春のシンシナティ
第三章 憂愁のカナダ横断鉄道――トロントからヴァンクーヴァーへ
第四章 東海道を行く(一)――横浜から焼津へ
第五章 東海道を行く(二)――焼津から姫路へ
第六章 中国山地越え、ハーンの変貌――姫路から松江へ
第八章 ヘルンとセツの新婚旅行――日本海、伯耆国の旅
第九章 西南戦争の残影――熊本にて
第一○章 神戸へ、新聞社への復帰――熊本から神戸へ
第一一章 人生の終着、東京へ――神戸から東京への旅
終章 生神様
あとがき
参考文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あーびん
25
幼いころに両親に見捨てられ資産家の大叔母にひきとられたハーンは大叔母の財産を狙う縁者にフランスの名門神学校に進学させられる。16歳で左目を失明、大叔母の破産で学校の中退を余儀なくされ、19歳で移民船で単身アメリカに渡る。その後地方新聞記者となるが、黒人の混血の妻(当時黒人との結婚は違法)にクレームがつき退職。来日するまでの波乱万丈なバックパッカーのような半生を知らなかったので驚いた。複雑な生い立ちだったからこそ明治時代の未開な日本に対する偏見がなく、日本に馴染み帰化するまでに至ったのだろう。2020/07/12
しんこい
7
ラフカディオハーンの生涯って知ってるようで全然でした。アメリカ滞在も知らないし、松江にお1年ちょいだったとはね。ハーンの旅路をたどって昔の日本やアメリカを語り、現代の旅を語る重層性が面白いし、ハーンの著作を怪談以外も読みたくもなる。2017/06/25
椿 釦
5
小泉八雲という名は知っていても、殆ど何も知らないまま、読んだ。なんて好きな人なのだろう!と、何故今まで知ろうとしなかったのだろうと後悔したが、この本で出会えたので良しとしたい。八雲こと、へるん先生の生涯が書かれていると同時に旅と思想の軌跡が描かれている。驚くほど、今に通じる。へるん先生の日本への愛憎は、よほど右や左に揺れていない限り、今の日本人に通じるのではないか。汽車旅行の描写も、勿論素晴らしい。個人的にはアメリカパートが好き。2017/04/19
蹴球有閑人
3
専門的な研究書なら触れているのかもしれないが 、松江以前アメリカ時代のハーンの生活や動向は初見であり興味深い。「怪談」の根元が「マーダーバラッド」というのも面白い指摘だ。「怪談四代記」でさえ、ギリシャ時代と日本時代を追うのみで、アメリカは‥‥いわゆる黒歴史なのかな。 その日暮らしの雑文ライターから、何を契機に小泉八雲となって行ったのか。作者の解釈と描写が生き生きとしている。 惜しむらくは散見する主語の分からない文。ハーンの旅程をなぞっているので、どちらが主語なのか分からない。2017/08/15
Panja Morimoto
2
鉄道をモチーフにして小泉八雲の人生を俯瞰する。なかなか面白い本でした。2018/03/30