角川文庫<br> 廃園

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角川文庫
廃園

  • 著者名:原田康子【著者】
  • 価格 ¥484(本体¥440)
  • KADOKAWA(2017/04発売)
  • ポイント 4pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784041249055

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内容説明

――ふいに、簑島夫人のぬれたような黒い髪と眼を思いだした。わたしの指よりも白く細い、オパールの指輪をはめた彼女の指が、夫の体をまさぐっている。そんな沈んだ色合の場面を、わたしは心の中に描いていた……。単調な家庭生活に倦み、くずれた幻を追う人妻のむつ子。孤独をいやすために、血のつながらない従弟の“若い心”をくすぐる感受性の鋭い女。妻子ある男との無謀な恋にふけり、疲れ果て自殺に失敗した過去のある女の、“愛”の不条理を描いた長編傑作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

備忘録

2
血の繋がらない若い従兄弟と情事を重ねながらも、夫への愛情が全く失せたわけではない人妻の心境が淡々と綴られています。どちらかというと先に従兄弟の方が主人公に熱を上げた感があり、主人公は押しに負けたのと暇を持て余していたが故にこうなっただけにも感じました。未来の無い男女関係は静かに暗い方向へと向かい、いつかこの二人は心中するのではないか、と思ったら前作では自殺する女性の話を書いていたんですね。なんとなくこの主人公もそんな結末を迎えてしまいそうな陰があります。2016/03/09

y_e_d

1
先など描けるはずもない継子の従弟との関係、そのために再認識する愛すべき夫、ぐるぐる巡って抜け出せない心情は分からないでもない気がするものの、果ては死を想像するのはいかにも自分勝手な感じで、共感はできないですね。ただ、このような構図にどっぷり嵌る洞察力の強い女性を描くのが、作者自身が好きだったのでしょうか。「風の砦」のような透明感のある人間関係もなかなかのものでしたが。話は好きなほうではありませんが、作者らしい簡潔で短文で小気味良い表現は十分堪能できました。2018/04/10

nightU。U*)。o○O

1
記憶が物憂くあたりから蘇り、戻らない若さへの渇望が彼女を振り回す。それが静謐に丁寧に、切なく書かれていてとても美しい。冒頭の夢の記憶は精神分析的にはともかく(分からないが)確かにこの作品のムードを塑像のように作り上げていた。現在ではこういう有閑な主婦はいないのだろうな、という点が古風かも、と考えさせられた。挿絵も素晴らしい。2014/11/30

学級ぶんこ

0
手元本。古い文庫を譲っていただいたので。初原田作品。冒頭「わたしは」という単語がいっぱいでてきてリズムに違和感を感じたけれど、読み進めればなんら気になるところはなかった。むしろ、主婦の心の奥の人には見せない部分が丁寧に描かれていて好みのタイプ。親戚の若い男性との間の駆け引きとか、旦那に好意をもっている夫人に対する感情の流れなどは、時代が変わったって、そう変わるものじゃないんだな、と。美しいだけの人ではない主人公に好感を持ちました。誰だって基本的には「腹グロ」である。2015/08/11

あずき

0
終始ひとりの女性の想いが綴られながら様々な模様がつむぎだされ、現実とリンクしてゆく。如何せん自分は男だから、女の人はデフォルトでこの思考回路を万人が有しているとは言わないまでも、そうなのかしら?と考えるとスゴいの一言につきる。男ってある意味素直な気がする。以前読んだ「バイブを買いに」を思い出した。キャラ考察が先立ったけれども、かといってストーリーの何とも言えない切なさと甘さと酸っぱさが、これまた絶妙です。原田康子恐るべし。2012/09/24

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