内容説明
性的虐待の果て、父親の子どもを産んだ女性。長年の介護生活の果て、両親とともに死のうと川に車で突っ込み、娘だけが生き残った「利根川一家心中事件」。介護離職から路上へ、そして支援者となった男性――。ごく一部の富裕層を除き、多くの人々にとってすでに他人事ではない「貧困/自己責任大国」日本の現実とその構造を、さまざまな「当事者」たちへの取材を通して、平易な言葉であぶり出す。疲弊する個人と社会に、今、どんな処方箋がありうるのか。<貧困問題>を10年以上にわたりさまざまな角度から追ってきた著者による、いままさに、切実な1冊。超格差・超高齢化社会の中で、今後、必然的に<弱者>となる多くの私たちは、どう生き抜くことができるのか? 奨学金、ブラック企業、性産業、そして原発事故や外国人労働者問題など、現代のこの国に潜む、あらゆる「貧困」に斬り込んだ渾身の一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヒデミン@もも
36
スーパー猛毒ちんどんのライブ。強烈。でも綺麗事では済まない社会。本音がすごい。2017/08/02
うさうさ
25
「貧困」とひとくちに言ってもその背景は様々。本書では最新の事件も織り交ぜ、貧困に至る様々なケースを解説している。 冒頭の「お父さんの子どもを産みました」という幼き頃から性的虐待を受けてきた女性の言葉に戦慄し、脳が理解を拒む。 介護離職、奨学金地獄、貧困による一家心中… 貧困はみんなのすぐ側にあるんだと改めて思う。2017/08/19
阿部義彦
23
他人事でない貧困をキーワードに様々な現場をフィールドワークした雨宮処凛さんの勇気に敬服。1「お父さんの子どもを産みました」からショッキング!障害年金欲しさにまともな娘を障害者に仕立てあげて特殊学級に入れて性的虐待を尽す毒親!その他生活保護の問題、私が面白かったのは性産業で働く女性を支援する活動を始めた面々、法律に反する訳では無いし生活する為にやってる仕事を、もうこんな事しないよねー。と綺麗事を言うケースワーカーの多い事よ。「否定しない価値判断しないっていうのは、ソーシャルワークの基本なんですよ。」2017/03/04
磁石
22
色々と最悪すぎて、どこをどう手直しすればいいのかわからない、そもそも根幹から間違っていたのではないかとも思ってしまう……。こんな社会で唯一の利点は、過半数以上が『絶望』を痛感すること/冷徹な眼力が宿ること、生半な幻や快楽じゃもう引き落とせない所に来てしまった。革命や戦争なんて熱狂を引き起こせないほど、冷たく見放されている。もう生き残ることも記憶に残ることすら諦めている、線香花火、切り捨てたつもりが切り捨てられていた。もう謝罪は間に合わない、取り返しはやってくる……。2018/02/02
Artemis
10
福祉の世界では、こうあるべきという正しさが前面に出される。こうあるべき!の枠組みから外れてしまった人は、なかったことにされてしまう。その結果セーフティネットをすり抜けていく人が生まれ、臨機応変さは失われていく。このような状況で求められるのは、正しい、正しくないで判断することではなく、目の前にいる人に寄り添うこと。寄り添わないと本当の困りごとは見えないし、実態もわからない。支援する人もされる人も、一方通行では限界がある。 2019/02/27