内容説明
確かなものってなんだろう――確かな愛、確かな場所、確かな自分を探し求めて、世界に向きあう「ぼく」の再生の物語。
5歳のクリスマスの日、お姫さまのお人形を欲しがって以来、「おかま」「失敗作」と罵られ嗤われる「ぼく」。そんな「ぼく」を生んだ母の不幸を背負い生きてきた少年は、祖父の死をきっかけに家を出て、逃げられない過去と果てしのない未来の間で走り続ける。自らの生と性をひたすらに見つめ、読む者に衝撃を与えた『尼のような子』『少年アヤちゃん焦心日記』に続く、少年アヤの最新作!!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おかだ
52
厚さのわりに重い。軽い気持ちで読み始めたら急激にしんどくなった。厳格な祖父に育てられいつも親族の顔色を伺っている母親に、僕は愛されなかった――。自分の趣向も理解してもらえず、尊厳を踏みにじられ、母の元を飛び出した。恋愛も、友情も、やっと見つけた安息の場所も、掴みきれない。愛されなかった記憶が、常に満たされない思いへと変わる。親の愛って大事なんだな…自己肯定感がなければ、どうしたって人は悲しい。でも最後に主人公がそこにたどり着けて良かったとは思う。でも全部祖父のせいだよな、許せんわ…とも思う。2019/11/15
だーぼう
22
本を読んでる間。間違いなく著者になりきっていた。没入感すごい。こんな感情があること知らなかった。ブログに感想を書きました。2017/01/31
ひとみ
5
家を出て、「おかま」という皮を捨てて剥き出しの自分になったアヤちゃんが東京で一人暮らしを初めて家族のことをなどを記したWeb連載をまとめて加筆修正したもの。私小説かエッセイになるのだろうか。今までの文章で語られていたご家族のことが整理されていてよく分かる。自分の身を抉るようなことを書いていてもどこか笑わせなきゃというサービス精神を残していた今までの本と比べて落ち着き、言葉の数が少なくなった分表現力が増したように思う。著者の書くものが好きなのだけれど、今はただ東京で根をおろすのを待つ期間かもしれない。2017/01/27
保山ひャン
3
家族のもとを離れて暮らしはじめた青年がどこまで行っても家族の地獄に追いかけられる。強権的な祖父、そして力が衰え、死んでしまった祖父。青年を失敗作と軽んじる親戚、母の呪縛、死んだペットなど。家族外で得た信頼できる人間関係も、彼らが家族関係を結ぶことで崩壊してしまう。ちょっと悲しすぎるんじゃないかとも思える、愛されなかったことで寂しい思いを引きずって生きざるを得なくなる話。つ、つらい。2018/08/07
cino
3
子供は子供に押し出されて世界に出ていくのか 装丁佐々木暁2017/01/22