内容説明
桜を美しいと感じるのは自然の情緒なのか、そのように刷り込まれただけではないのか。記紀や万葉集から最近の桜ソングまで、誰も触れえなかった問い=タブーに歌人が果敢に挑む。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harukawani
6
「桜は本当に美しいのか」という題名通りの問いから、記紀、万葉集、古今・新古今、古典から現代の桜ソングまでを取り上げ、文芸において桜がどのような役割を演じさせられてきたかが論じられている。問いに対する解答は明確にされず、なかば強引な持論への持っていき方に不満もある。ただ、短歌や古典のことを知らないでも、興味深く読むことはできた。桜に関しては僕も思うところがある。あの儚い薄紅色に魅せられ人が集まることに、毎年なぜか怖さを感じているが、それは逆に「桜は本当に美しい」ことの証左なのかもしれない。2017/04/23
takao
2
ふむ2022/10/02
denden
1
我が偏愛する短歌人、水原紫苑の桜にまつわる短歌史、文学史。非常に面白い。恐れを感じさせる古代の桜から万葉集を経て紀貫之編の「古今和歌集」が語られる。それを「絶対的な王権による美の創造」だったと語る。古来の山中にあって恐れを抱かせる桜ではなく・・貫之の「かな序」がその宣言だったとは、どこの教科書にも書いてないことであった。次第に桜は山中から宮中へ下り、市井のものとなる。それは帝の政治なのであり、権力が介在するものであった。以下、日本史を辿りながら桜と文学が語られる。著者が思いの外反戦、アンチ安倍的で驚く。2019/04/24
カタユリ
0
「桜」という存在を、和歌や詩を通して明らかにしようという試みの書。 著者が述べている通り、体系的に叙述したものではなく、主に著者の感性に合うものを重視して選んだ内容であったが、それでも時代ごとの桜にたいする感情の相違が明確に現れていることを感じ取れて有意義であったと思う。 共同幻想としての桜が千年以上も続いている日本で、日本人が桜を「ただの花」として見れる日は来るのだろうか。2018/02/28