内容説明
独特のモダニズム感覚で、今も根強い人気を誇る稲垣足穂。月や星への憧れ、ヒコーキ野郎たち礼讃、神戸の街への偏愛、そして幼少期の不思議な体験……。珠玉の随筆を精選。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Sakie
21
古書店の店主が、戯れに私に勧めたのが、稲垣足穂だった。どんな作風なのかも知らず、著作を選べないまま古書店は閉まって、未完の宿題になってしまった。もっと早く平凡社がこのシリーズを出してくれていたら、感想を伝えられたかもしれない。稲垣足穂は永遠の理系少年みたいだった。どこまでも現実的な寺田寅彦とは違い、その科学や物理分野への博識からファンタジーの世界へ跳躍する感じがあり、それが老年になっても残っている。星座を覚えて、道々夜空を見上げては何が見分けられたかを日記に記すなど、愛すべき生真面目な人であっただろう。2021/05/05
ミエル
20
幻想小説ではなく幻想的なエッセイ。稲垣足穂は中島らもで覚えた作家。寝る前にを少しずつ読む至福の時間。センスが良いとはこのことだなと敬服する。宇宙と私、神戸と私、不思議体験と私、どこを切り取っても珠玉過ぎ。2020/12/03
葵衣
15
これまでに足穂の作品を何冊か読んだが、これはその中で飛び抜けてお気に入りの一冊となった。足穂の月や星に対する情熱をたっぷりと堪能でき、また、足穂と共にあった不思議な夢の世界にゆらゆらと揺蕩っているのが心地よかった。特に好きなのは「緑色の円筒」「横寺日記」「「黒」の哲学」「夢がしゃがんでいる」。2018/07/29
Saku
14
自分にとってイナガキタルホとは行く先を見失ない道に迷った時に帰って行く所なんだ。2016/10/26
relaxopenenjoy
7
足穂の短編集。図書館でたまたま見つける。Standard Books幾つか読みたい登録済みだったが、装丁が素敵(表紙、挿絵など) 。「緑色の円筒」と「放熱器」以外は未読。これまで読んだ、弥勒やA感覚…やヰタ・マキニカリスとかより読み易め? タルホの変態色(?)薄め、ロマンチスト色強めの選集。お月様、彗星、神戸、飛行機、天文、星、キネオラマ。エッセイに時々交流のあったらしい作家や版画家が出てくる(室生さん、種村さん、野中ユリさん、、、) 野尻抱影も既に読みたい登録している。2022/07/30