内容説明
遠くヨーロッパ中世、市井の人びとは何を思い、どのように暮らしていたのだろうか。本書から聞こえてくるのは、たとえば石、星、橋、暦、鐘、あるいは驢馬、狼など、人びとの日常生活をとりまく具体的な“もの”との間にかわされた交感の遠いこだまである。兄弟団、賎民、ユダヤ人、煙突掃除人など被差別者へ向けられた著者の温かい眼差しを通して見えてくるのは、彼らの間の強い絆である。「民衆史を中心に据えた社会史」探究の軌跡は、私たちの社会を照らし出す鏡ともなっている。ヨーロッパ中世史研究の泰斗が遺した、珠玉の論集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ハチアカデミー
14
様々な媒体に発表した短いエセーの集成。だが、その短文のひとつひとつは、一冊の本できるだけの深淵が見える。橋、靴、ビールなど身近なモノから歴史・社会をみる視点が面白いのだが、「カテドラルの世界」のように、その広がり方も凄い。「動物」を扱った論考も印象深い。「オイレンシュピゲールと驢馬」「人間狼の伝説」の二編は、都市が形作られ社会が形成されることによって、人々の価値観が変わり、動物へのまなざしも変化していく過程が鮮やかに記される。「歴史学」という学問そのものへの厳しいまなざしも感じる読み応えのある一冊でした。2014/12/05
彬
10
中世ドイツの庶民の生活を描写してくれる良書。庶民生活を調べようと思うと日本語だと少ないし表面さらりで終わってしまうのが多いのに、歴史だけでなく人との関わりに興味を持っているからこその突っ込み具合がとてもありがたい。ただこの本は複数の論文を一冊にまとめているものなので内容の重複があったり、題材が変わったりとまとまりはあんまりない。後半は阿部さんの研究者としての立場から意見するものがまとまっていた。ここに彼個人の思想が見えたのは筆者をより身近に感じられてよし。やっぱり内容は被ってるんだけどね…2012/07/20
kanaoka 58
7
中世ヨーロッパのゲルマン的伝統を引き継ぐ、庶民の生活、生き方、考え方、思いが伝わってくる。そして、キリスト教の強大な強制力、影響力を知る。11、12世紀に時間、空間、人の繋がり方が大きく変化し、それが現代の社会に至っているという。しかし現代は、これまでの生き方を変えていく大変動の最中でもある。今とは違う世界観がすぐ過去にあったという事、そして、それはまた今大きく変わろうとしている事を想わずにはいられない。2025/02/27
おりひら
5
中世ヨーロッパというより、中世ドイツを中心に庶民の生活や思考、趣向を描いている。また庶民だけでなく、その外側にいる人々へも目を向けている。この今まで、光を当てられない人々から歴史を見つめ直すことにより、今も抱えている人類の営みの問題が、どこに根差すものなのか?形成されるのか?を浮かび上がらせられるのではないかと思わせる。また、現状(著作当時)の歴史学の姿勢に問いかけている。そこを抜きにして、中世の庶民生活を垣間見ることが出来て面白かった。2018/12/30
本とフルート
4
主に中世ドイツに焦点を当て、庶民の暮らしをありありと描く一冊。様々な角度から浮かび上がってくる歴史に名を残さない人々の生活は、今も昔も変わらない人の在り方を教えてくれる。宗教の信仰を捨て、科学と理性の信仰にすがりつく現代人は、どこに向かっていくのだろう。2022/08/19
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