内容説明
『老子』には、「無為自然」「道」「徳」の根本思想、「小国寡民」「無為の治」の政治哲学、「不争」の倫理思想、養生思想など、古代中国の思想の根幹がある。本書は、『老子』の諸思想を総合的・体系的に解明し、その諸思想の内容を分かりやすく解説。充実の【注】は、『老子』成立の諸事情と思想の内容にも深く立ち入る。原文全文と【読み下し】【現代語訳】も収録。『老子』の初学者から専門家までをカヴァーする決定版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
非実在の構想
5
京極夏彦を彷彿とさせるレンガ本。執念を感じる。しつこいほど例証をあげており、理路整然として納得がいった。老子のなかには万物を主宰する道と自然(みずから)である万物という矛盾する二つの思想が含まれて、それは皇帝と人民という秦漢帝国のシステムと相似形をなしている。時代が下るにつれ解釈のうえで道は影を潜め自然が強調されていく。老子が持て囃された後漢末、三国、南北朝時代は皇帝権力が弱まり地方分権になった時代で、自然思想と適合していたという指摘には目から鱗が落ちた。2017/05/28
さとうしん
5
副題にある通り、『老子』の訓読・現代語訳はおまけで、その思想についての考証がメイン。部分的に『老子』が『荘子』の影響を受けているという指摘や、民本主義とでも言うべき後代の民主主義や無政府主義に通じる思想が読み取れるといった指摘は面白いが、これらの指摘の多くは、郭店簡本『老子』の年代を無理に戦国末まで引き下げずとも、通説通り戦国中期のものと位置づけても充分通用するのではないかと思う。この点だけが残念。次回作としては、出土文献本を踏まえた『周易』の思想について書いて欲しい。2017/03/17
M
2
下村湖人の「論語物語」で湖人なりの孔子の教えに触れ、非常に感動したのを覚えているが、その話の中に登場する老荘思想を持った人物にはあまり共感できなかったことを読みながら思い出していた。以前、「荘子物語」を読み、荘子に触れ、そして、今回は老子の思想を読み解いていたが、倫理思想として「柔弱」の生き方は学ぶところも多かったが、「虚無」「無為」の思想に感心はするが、私には真似できないなと思わされた。現実を見据え清濁併せ呑みながらも、喜怒哀楽を味わう中で自らの感性を育みながら他人と共生していくのが理想かなと私は思う。2019/05/05
cotatumikann
0
図書館。ほかにも老子の本を何冊か読んでみたがこの本が一番しっくりきた。2023/11/03
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