内容説明
戦後日本のポップスシーンとともに生きたポッススター、はじめての自伝。
日系2世のジャズ・ミュージシャンを父に持ち、十代のはじめからジャズを聴き始め、、カントリー&ウェスタン、ロカビリーといった戦後復興期の音楽シーンをミュージシャンとして体験。
グループサウンズの全盛時代には、ザ・スパイダースのメンバーとして、堺正章や井上順らとともにポップスシーンの頂点に立つ。
その後もロックンロール、フォークと、さまざまな音楽に取り組み、そのハイレベルな音楽性は、小西康陽や小山田圭吾といった後進のミュージシャンからリスペクトされている。
本書では、親友で早世した俳優の赤木圭一郎や、ミュージシャン、俳優、作家、デザイナーなどが出入りした東京・飯倉「キャンティ」の思い出、松任谷由実や吉田拓郎といったミュージシャンとの交遊を、都会育ちらしく洒脱に語る。
2017年3月にがんで逝去するまで、つねに音楽活動やカルチャーシーンで強い存在感を発揮し、多くの人から「ムッシュ!」と愛された男の輝かしいクロニクル。
※単行本・文庫収録写真のうち、一部、電子版には収録されていないものがあります。※
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
阿部義彦
18
「他のアートでいうと、絵画や彫刻の場合はやはりモノとして存在する訳だから、時としてその芸術的価値から逸脱して、カネとか投資の対象になってしまう所がある。だが、音楽は違う。投資しなくとも、カネをかけなくても心とか体に大切にしまって置けるものなのだ。」グループでも一番自由な精神を持っていたムッシュ。それが晩年の若いミュージシャンとのコラボラッシュにも繋がっていたのだろう。ただ、ケンカはしない。人を傷つけるのも嫌だしもちろん傷つけられるのもいやだ。僕自身が楽しんでさらにオーディエンスが楽しんでくれれば良い。2017/04/01
kawa
14
自らをB級ミュージシャンと呼ぶ、究極の音楽自由人ムッシュかまやつ。「人しれず好きなことをやるというのがカッコいいのであって、…自分が何者だかわからないといいながら死んでしまうのが、いちばん幸せ」と言って逝ってしまった。RIZEとの「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」カッコよくて、ライブに行くつもりだったのだけれど…。天国でもムッシュ、キープ・オン・ロッキン!2017/09/25
ジュリ(村上)
6
序章で還暦パーティの話が始まり、『しまった、センス光るエッセイでも自伝でもなく内輪ノリの交友録か…』と青くなったが、その後は自伝が始まり安心。ムッシュというあだ名ながら米国のルーツだったことも知らなかった。駐留軍がミュージシャンを調達する段取りなど面白かった。以前安井かずみに関する本を読んだので、六本木キャンティの話題が出て話が繋がり、文化人・芸術家サークルの存在が再確認された。何度も登場する曲『ゴロワーズ』が気になり聴いてみたら面白い曲だった。これと我が良き友よがシングルというのは意外な組み合わせだね。2023/06/24
mymtskd
6
ムッシュ氏の楽曲に漂うアメリカの雰囲気やセンスのルーツが見えた気がしました。60年代、飯倉のキャンティに集う当時の文化の先端を行く人たちとの交流や当時のニューヨークの状況などの話も興味深いです。自由で鋭い感性を持ちながらもムッシュ氏の穏やかなお人柄が偲ばれる1冊でした。2018/04/17
sasha
5
「あの歌は、あなたがちっとも感情移入していないからいいのよね。私がもしあの歌を歌っていたら、きっと感情が入りすぎて失敗していたでしょうね」。美空ひばりの「我が良き友よ」に対する分析。凄いわ、お嬢。ムッシュはその時、好きな音楽を、自分のものして来たんだな。嫌なこともきっとたくさんあったんだろうけれど、どこか力を抜いたようなムッシュの生き方。好きだわ。2016/05/26