内容説明
山東京伝や恋川春町らで世を沸かせ、歌麿を磨きあげ写楽を産み落とした江戸随一の出版人・蔦重。 出版者であり編集者であり流通業者であると同時に、流行を仕掛け、情報を発信する辣腕メディアプロデューサーでもある。 そして何より、新しい才能を見出し育てあげて世に出し、江戸の日本の文化を変えた巨大な創造者でもあった。 時に為政者の弾圧に遭いつつ「世をひっくり返す」作品を問いつづけた稀代の男の波乱の生涯を、江戸の粋と穿ちが息づく文体で描き切った渾身の時代小説!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nico🐬波待ち中
82
江戸一の本屋、と名高い蔦屋。ただ本を売るだけでなく、常に時代の流行に目を配り、時に流行を仕掛け江戸文化を創り上げていたといっても過言ではない。「たった一度の人生だからこそ粋に生きなきゃ。なるたけ愉しく、おもしろく」"江戸っ子の粋"にこだわり続けた男・蔦屋重三郎。為政者の弾圧なんてもろともせず、常に初志貫徹な男の生き様は、もはや天晴としか言いようがない。喜多川歌麿、葛飾北斎、曲亭馬琴、十返舎一九、写楽。江戸文化に欠かせないこれらの戯作者・絵師たちを誰が演ずるのか、再来年の大河ドラマが今から楽しみで仕方ない。2023/06/04
真理そら
49
『絵師の魂渓斎英泉』が楽しく読めたので、同じ作者が蔦重をどう描いているのか気になって読んでみた。吉原で生まれ育った蔦重の夢や野心がそのまま描かれていて、すっきりと読める。北斎や歌麿、馬琴や一九があまり奇人変人でなく普通のプロの書き手(描き手)として扱われている点は『~英泉』と同様だけれど、蔦重の葛藤についてはもう少し粘っこく描かれている方が好みだったかも、とも思う。2019/06/20
Y2K☮
31
車浮代「蔦重の教え」は殆ど自己啓発系ビジネス書。谷津矢車「蔦屋」は蔦重が格好いい娯楽小説。では今作は? ずばり写楽。構成も文体も下手くそ。なのに他の二作品にはない謎の生々しさ。特に寛政の改革を経た後半。商売人としてのいやらしさも容赦せず描いたら、あの世の蔦重が「やめてくれ」と著者に泣きついたかも。ひた隠す心の闇を写楽の筆によって看破された歌舞伎役者の様に。でも著者的にはこんな寸評こそ「しゃらくせえ」か。肝は「穿ち」という戯作者の闘魂。彼らが書くのは生活の為じゃない。だからこそ自由で反骨。原風景を見つけた。2018/03/26
ふじさん
27
図書館本。浮世絵の世界で、蔦屋の存在がこんなに大きな物とは知らなかった。江戸史を知ることができ面白かった。 2020/03/16
カニ
21
『蔦が絡まるのは自然の道理、江戸中を蔦屋の本で覆いつくしてしまいたい』少し前に読んだ「蔦重の教え」とはまた一味違う魅力的な本でした♪歌麿、写楽などを世に出した編集者でありプロデューサーである“蔦屋重三郎”の生き様が描かれています。いつの時代も本への熱い思いを持った人たちはいるんですね☆2017/03/24