岩波科学ライブラリー 見捨てられた初期被曝

著者名：study2007

岩波書店（2017/03発売）

• ISBN：9784000296397

内容説明

事故前に描かれていた原発事故後の緊急被曝防護は，もろくも崩れ去っていた．そればかりか，科学的検討の不在のまま，初期被曝は見捨てられていた．公開された政府事故調文書から明らかになった驚くべき経緯を整理．さらに，限られたデータから被曝量の推定を統計的に行う．再稼働を前に，安全神話のままの被曝防護を問う．

目次

目　　次
　　　まえがき

　はじめに──なされなかったこと，なされるべきこと

　第 1 章　見捨てられた初期被ばく
　　　限られた直接測定／機能しなかった環境測定／1 桁もゆるめられた身体除染基準／ 「液状化」した住民防護
　第 2 章　変質したスクリーニング──科学の消失から「安心」へ
　　　who による安定ヨウ素剤服用ガイドラインでは／公開された聴取録／混乱のなかでゆるめられた基準値／ 「安心の拠り所」への変質
　第 3 章　スクリーニング基準値の意味
　　　10 万人の体表面スクリーニング検査／基準値 1 万 3000 cpm が意味する水準／子どもの甲状腺防護の危機
　第 4 章　矮小化される被ばく被害
　　　体表面スクリーニング検査を受けた集団の甲状腺被ばく量／東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議／1080 人の子どもの甲状腺スクリーニング検査／検討を避けた専門家会議と過小評価
　第 5 章　神話のままの被ばく防護
　　　事故の現実から乖離したままの原子力災害対策指針／汚染の現実と防護の方法／ 「安心のしきい値」／新たな安全神話
　　　補論　沈着速度の考え方──土壌汚染データから被ばく量を推定するために
　　　コラム　study2007 と被ばく
　　　参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

[calaf]

福島第一原発事故は、事故以前の体制に問題があったために発生し、拡大してしまったものの、今後はそれを生かしていかなくてはならない。しかし政府等発表の資料をみる限り、それがなされていないばかりか、逆に問題を覆い隠す方向に動いているとしか思えない・・・という主張。確かに・・・という気がする・・・

2015/08/01

[ぱせり]

私にはとても難しく理解できたとはいえない。それでも、わかりたいと思って読んだ。権力者や専門家が巧に覆い隠そうとしても、ごまかそうとしても、動かない事実がある。巻末のコラムの、自身の闘病中に出会った癌と戦う子どもたちへの思いに打たれた。それがこの本の下敷にある。そして、見つめているのはこれからの子どもたちのことなのだ。

2015/11/17

[coolflat]

他のレビュワーの方も書いている通り、専門用語が多く、普段からある程度被曝について理解がないと難しいように感じた。個人的には最後のコラムが良かった。本編よりもむしろ筆者の言いたいことはこのコラムに集約されているように思う。筆者は自身のガン放射線治療の体験を通じ、病院内で出会う小児ガンの子どもたちに考えを巡らす。そして福島の子どもたちに起こるであろう小児ガンについても同様に。筆者は言う。避けることのできるガンリスクが非科学的で理不尽な理由により、多数の子どもたちに押し付けられるのを、私は許すことができないと。

2015/08/11

[Ｍａｏ]

崩壊した安全神話に代わって、基準値を引き上げることによって問題なしとする新たな安全神話を「専門家」が発明してしまった。更に政府は「故郷か被ばくか」という二者択一議論を演出することで「安全な場所への移住」という賠償責任を放棄しようとしている。（ｐ96）　原発事故によるリスクをコスト・ベネフィット論で計算する試みもあるが、子どもたちの命や苦痛を電力会社の利益に換算することはできない。（ｐ112） 大金を持つ者達の価値観が優先される社会から、どう脱皮すればよいのか？

2015/08/18

[アイス１億円]

非常時とはいえ、前々から決められていた規制値を一万から十万にすることが許されるのか。10倍だよ？　政府の連中は頭おかしい。

2017/02/06