内容説明
一九三三年、私は「天皇」と同じ日に生まれた――東京オリンピックの前年、出稼ぎのため上野駅に降り立った男の壮絶な生涯を通じ描かれる、日本の光と闇……居場所を失くしたすべての人へ贈る物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
だんぼ
454
一度だけ 盆休みの前に何日か帰れた年 子供たちの甘酸っぱい汗のにおいをびこういっぱい吸い込んで 容姿よりも 無口なこと 無能なことが苦しかった2024/04/26
bunmei
372
現在と過去の出来事を交錯させながら、上野の街や人々様子も具に写しとり、言葉や文章も文学的な表現で彩られている。出稼ぎで家族とも離れた生活の中で、ホームレスとなった不遇な男の生涯を通して、そこはかとない悲しみと哀愁が漂ってくる。上野を舞台として、普通の人々の日常とホームレスの非日常を対比する中で、出稼ぎ、天皇制、日本経済の浮き沈み、家族との死別等を取りあげて、人生の光と闇を鋭く描写している。生まれた事が悪いのか?それとも運が悪いのか?社会の隅に追いやられた男の、悲痛な叫びが聞こえてくるヒューマンドラマ。 2021/01/21
mapion
350
上野駅公園口は近くに博物館や美術館、動物などがあり、ホテルや飲食店もあり様々の人が行き交う場所。歴史を辿れば天皇から賜わったところで上野恩賜公園が正式名称。東京都民の憩いの場所だが、ホームレスの住処にもなっていた。作者は現地でインタビューを重ね、切なくやるせなく、そこに住まわざるを得ないホームレスの方々の生活、人生をも語る。福祉のあれこれ、社会政策がどうのこうのと余計な話はせずに、あるがままの姿を見せてくれる。ドキュメンタリーの香りのする小説。2025/12/12
rico
336
年に何回かは訪れる上野公園。近年整備が進みカフェなんかもできた。一方、たくさんあった段ボールハウスもその住人たちも見かけなくなった。彼らの傍を通るとき、目をそらしていた。存在を「ないこと」にしてた。彼らは確かにそこにいて、それぞれの人生を生きていたのに。彼もそこにいたのだろうか。出稼ぎ、家族の死、天皇家との縁と対比。着の身着のままでここにたどり着いた。故郷を襲った災厄は全てを押し流す。静かな彼の眼差しを感じた時、無自覚に公園を歩く私にも、この国のもう1つの姿と世界のよるべなさが押しよせてくる。2020/12/16
神太郎
295
短くさらりと読める本だ。さらりと読める文体が作者の味なんだろうな。だが、内容はさらりとは言いがたい。天皇制というのももちろん根底にはあるかもだが、「東北からの出稼ぎ」「枠からはみ出した者」そして「震災」とそこら辺もキーワードたりえる。主人公の人生も報われない部分があり、読んでて辛い。出稼ぎでなかなか帰る場所にいれなかった。息子や妻に先立たれ、心の拠り所が完全に消失した。そして震災。主人公の立ち位置は原発で帰りたくても帰れなかった被災者の人たちとも被る部分があって著者はそこと重ねても描きたかったのか。→続2021/01/25
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