内容説明
終戦間際の1945年、昭和20年の春――。
薩摩半島南部にある知覧や大隅半島の鹿屋、串良の飛行場から、数千人の二十歳前後の若者たちが、爆弾を抱えた飛行機とともに沖縄を目指して飛び立った。
自らのいのちと引き換えに、敵機に特攻するために……。
しかしながら、6人の特攻隊員が、鹿児島と沖縄のあいだに浮かんだ黒島という小さな島に辿り着いている。
黒島の人たちは、けんめいに介抱した。
それによって、いのちを救われた兵士たちもいた。
そんな元特攻隊員と、黒島の人たちとの交流は、70年が過ぎた現在でも続いている。
老いとともに途絶えていくきずな。風化される記憶。
それでも、あの戦争を語り継ごうとする人たちがいる!
「あの戦争から遠く離れて」の大宅賞作家が、自らのライフワークに取り組んだノンフィクション作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
昭和っ子
26
現在に続く、特攻隊にまつわるストーリーを持つ黒島。この島に宿命的に惹きつけられて死病と闘いながら関わり続けた映画監督と、その死まで彼を支えた妻。彼女の、現実にしっかり根を張った様な語られ方が好ましい。生き死にギリギリのダイナミズムと、その狭間の人々の献身、優しさ。戦争のストーリーは、今でも皆を惹きつけてやまない。だが、その「自分の世界を拡張するやり方」は残酷で、無駄も多かったと言わざるを得ない。過ちを繰り返さないためにも、戦争の話は語り継がれなければならないのだろう。2017/08/21
信兵衛
25
一番強く印象に残ったことは、黒島という島が日本にあったのだ、ということ。これまでまるで知りませんでした。2017/03/18
黒豆
6
終戦間近に特攻隊員として出撃したが飛行機の不調などで黒島に不時着した人々の終戦から70年経過しギリギリの取材記録、新聞の書評が気になり読む、が、後半は2004年に放送された小林広司さんのドキュメンタリードラマ「黒島を忘れない」に絡んだ小林さんへの取材記録がメインで物足りなかった。2017/03/16
東京には空がないというけれど・・・
5
前半は、別の本『黒島を忘れない』(小林広司著)の内容と酷似していると思って読んでいたら、後半からがオリジナル。知覧などから沖縄へ向けて出撃した特攻機で、エンジン不調などで数機が、鹿児島県の黒島に不時着した。助かった特攻隊員と島の人たちの心温まる交流を描いたのが『黒島を忘れない』で、その著者と妻である小林夫妻の物語を描いたのがこの『黒島の女たち』である。本筋の話は、原本の『黒島を忘れない』を読まれた方が良いかと思う。2024/08/04
キンセンカ
5
明日よなー とは、また明日、と言う意味の黒島方言で別れの挨拶なのだとか。この言葉に秘められた希望や祈りが後世まで伝わることを願う。2017/03/25