内容説明
脱走した凶悪犯。悲劇は繰り返されるのか? 『熊と踊れ』著者の原点。北欧最高の「ガラスの鍵」賞を受賞した〈グレーンス警部〉シリーズ第一作。このミス1位を獲得した『熊と踊れ』の著者のデビュー作、刊行!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
青乃108号
195
小児性愛の性犯罪者の話だとは分かってはいたので正直あまり気乗りはしなかったんだけど、いざ読み始めるとこれが面白い。確かに変態の話だけど、猥雑なあるいは扇情的な場面はホンの僅かで、ワンサカ出てくる登場人物のこれまた名前が覚えにくくて仕方ないのだけど、名前は覚えなくても何とかなるくらいに物語の運び方が上手いものだから、一体この話は何処に向かって行くのか気になって仕方なく、途中で嫌な予感が漂い始めるのだけど、まさかそんな、そっちは嫌!やめて!な方向にどんどん突っ走り、頭から壁に突っ込んで脳天カチ割られたような。2024/11/27
ケイ
138
ルースルンド、ヘルストレム共著第1作。逃亡犯を追う攻防があっさりと…と思ったら、テーマがそこにはなかった。次作の『ボックス21』でも思ったが、ストレートに名(迷)刑事を描くのはなく、普通に警官として働いていたらぶち当たる葛藤、疑問を二人の警官と1人の検察官を通して描いている。死刑廃止云々を含め、社会にある疑問に対し、答えを出していくのではなく、いくつかの取られた行動を示し、読者に判断を委ねている気がした。特に、性犯罪について。作者等が男だからこそかも。2018/03/11
ふう
97
読み始めて数ページでつらくなり、読むのをやめようかと思いました。それでもどこかで救いを感じるのではと読み進めたのですが、とうとう最後までつらいだけでした。何も解決せず、答えもなく、悲劇が繋がっていっただけ…。作品はフィクションでも、現実の社会でもこんな犯罪が起こり、深く傷ついた人々がいることを日々のニュースで知らされます。こんなやりきれない社会で生きていることを受けとめ、すべてを解決できることは望まず、でも少しはいい方へ向かうことを信じるしかないのでしょうか。 感想を書くのもつらい…。 2017/05/03
巨峰
94
北欧ミステリ。でも一筋縄ではいかない筋書きとテーマの設定が残虐描写を越えて読者を誘う。北欧の死刑の無い社会での自力救済の可能性というものを追求したのだろう。作者は否定的だけど、子供をいくら残虐に自らの欲望のまま殺しても死刑にならないというのは、どこか社会の矛盾を感じるところであります。2019/05/29
のぶ
82
読み物としては面白いが、テーマとしてはとも辛い話だった。話のメインは小児性愛者が5歳の女児を暴行し、父親のステファンソンが犯人を射殺した。犯行を犯した男は言わば人間のクズで、同情の余地はなく描かれている。女児の父親の行った復讐の行為が犯罪として裁かれるか、正当防衛として認められるのか?これが正しくタイトルにあたるのだが、リーガルサスペンス的なこの部分が一番興味深く読ませるところだった。先に読んだ「熊と踊れ」が面白く、読んだ順は前後したが、本作も満足の一冊だった。2017/04/28