内容説明
戦前の東京の暮らしを回想した珠玉エッセイが復刊。
東京・日暮里で生まれ育った作家・吉村昭が、食べ物、風物、戦災など思い出を鮮やかに綴った。
「日暮里を下町と言うべきかどうか。江戸時代の下町とは、城下町である江戸町の別称で、むろん日暮里はその地域外にある。いわば、江戸町の郊外の在方であり、今流の言葉で言えば場末ということになる」
「私が日暮里で生れ育ったことを知っている編集者から、少年時代の生活を書くように、と何度もすすめられた。が、私は、まだそんな年齢ではなく、それに下町の要素が濃いとは言え、御郭外の日暮里を下町として書くのも気がひけて、そのたびに断ってきた。
しかし、私も五十代の半ばをすぎ、戦前なら故老の末席に入ろうともいう年齢になったことを考え、思い切って筆をとることにしたのである」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Willie the Wildcat
68
ノスタルジー。衣食住に娯楽・・・。何気ない日々の生活を取り囲む”風景”。季節感と細やかさが印象的。前者は、風鈴屋、金魚屋、朝顔、虫売りといった物売り。文字にすると尚更風流。後者は、”代金の月払い”の件。サザエさんの”三河屋”ですね。総じて時間の流れが、現代とは異なるような気がする。映画、演劇なども、”泥臭さ”というか、”人”を感じる。懐かしいのが『フクちゃん』。本好きの叔母さんが、亡くなる前に譲ってくれた漫画。もれなく私の宝物の1つ。 2017/06/27
たぬ
40
☆4 エッセイ集。昭和前期の日暮里や上野周辺ってこうだったんだな~と楽しく読んだ。無駄に「昔はよかった」にしていないのも好感。衛生面なんて特に「今のほうが圧倒的によい」だもんね。親に内緒で映画館に行ってたこと、自分でこしらえた玩具で遊んだこと、カレーそばに感激したこと、凧揚げのこと…近所の怪しい青年の話も好み。2022/04/14
penguin-blue
37
作者はうちの父より少し上なので、作中に広がるのは父や伯父伯母、またはその周辺から聞かされてきた「昭和」の風景。作者の住む日暮里や浅草は下町でも少し上級な感じがするが、一応下町と言われる私の地元も幼い頃はまだもう少しこの本に通じる「下町っぽさ」が残っていた気がする。昔の遊びや映画館、物売りなど子供の目から見た下町情緒がふんだんに描かれるが、世代的にどうしても戦争が影を落とす。「下町は美しいものではない」と言いつつも、生まれ育った土地や時代への懐かしさと愛情が溢れ、読んでいるこちらも何か遠い目になる。2020/12/16
kawa
33
吉村氏の幼少時代に育った街・日暮里の戦前から戦中、戦後の思い出を綴るエッセイ集。昭和58年作なので、今からさらに40年前の執筆で遥か昔の感ありなのだが、グーグル地図を確認しながら散歩気分で読むと、取り上げられている場所が結構確認できることにびっくり。氏の自宅が、今年訪問した子規庵にほど近いことも確認、上京のおりにはあたりを散策したい意欲も高まる。8歳のときに既に第一回芥川賞作品・石川達三「蒼氓」を読んでいた等の小ネタも興味深いし、永田力氏の挿画も印象的。2024/11/25
Shoji
30
昭和2年生まれの著者が、昭和58年に著した作品。生地での戦前、戦中、戦後の暮らしを思い出して書き留めたエッセイ。当時の素朴な生活様式が目に浮かびました。昭和初期の下町の様子がとてもノスタルジックです。滋味のある一冊でした。2024/01/12
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