内容説明
秦朝末期、天下の覇権を争った項羽と劉邦。この二大英傑に挑んだ百戦無敗の魔神こそ黥布である。猛者ぞろいの項羽軍にあっては常に先鋒をつとめ、秦を滅ぼす最大の功労者となり、その後の楚漢の抗争では、劉邦軍につき楚を攻撃。劉邦の国内統一を大いに助けた。しかし、天下統一後、次々と功臣を抹殺していく劉邦に恐れをなした黥布は、やむなく反乱を起こす。急行してきた劉邦軍に囲まれる黥布。怒りに燃える劉邦が「なにゆえ反乱する」と問うと、不適にも「皇帝になりたいだけさ」と語ったという。この戦いで劉邦に致命傷を負わせるなどして互角以上に戦った黥布だが、多勢に無勢、最期は義兄に殺されてしまうのだった。英布と呼ばれた善良な馬喰(ばくろう)が、予言どおり黥刑を受けたのちに王にまでのしあがった苛烈な生涯を、新しい視点で描いた力作。20万の秦兵を惨殺したとして『史記』に描かれているアンチヒーロー像を真っ向から覆す!!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MIKETOM
7
この人の知名度はどれくらいなのかな。秦の捕虜20万人を皆殺し(生き埋め)という超絶暴挙をやらかしたのは項羽だが、その実行部隊長がこの黥布。罪とも言えない罪で顔面に醜い黥(いれずみ)を施され絶望感に苛まれる人生。凶悪無残な人格になるのもやむを得ないのか。項羽とどっちもどっちの人格破綻者ぶり。まあ、戦国時代の常として離合集散の果てに項羽と袂を分かち、劉邦に組して項羽を打ち取る側に回る。しかしながら後の劉邦の功臣に対する残酷な仕打ちに対して反逆を試み、果てに滅びてゆく。妻子も惨殺されてしまったし。哀しい人生。2023/03/17
BIN
3
項羽の右腕にして、劉邦に引きぬかれた結果勝利に導いた猛将、英布こと黥布を描いた作品。序盤の捕まって刺青を掘られて脱出するところまでは面白く、全般的にも良い出来だと思う。ただ、史上最大の生埋めではないし、韓信がかなり早い時期に劉邦側に行っているところなど、細かなところで史記の内容と異なるという点がひっかかる。凶暴さと純朴さが共存する格好いい将軍です。2014/07/06
Hideto Takahashi
3
20万人もの降伏兵を生き埋めにした項羽の殺戮の実行部隊の将。軍歴も名も無い好青年が悪虐の猛将に育って行く過程とその中での葛藤を描いている。惜しむらくは史料の少なさゆえの史実の薄さか。2012/06/30
小まる
2
以前に2作品、この時代の作品を読んでますが、それぞれ主人公が違いました。全く史実に疎く、よくわかっていない自分には読むたびに新鮮な感覚を覚えます。今回は黥布。歴史物、戦記物は勝者の為の物語が多いんでしょうし、史実とは違うんだと思いながら読みました。軽い文体に最初は戸惑いながらも面白く読めました。今度はわかり易く翻訳された史記を読み、全体の流れを把握したいなって思います。2021/04/28
ぷ
2
そのまま劇画になりそうな台詞の多い軽い文体とキャラクターの立った設定で、読みやすく、しっかり感情移入しつつ楽しめた。大変魅力的な黥布さん像だった。2014/04/30