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内容説明
グローバル市場経済の秩序が政治に優先されるなか、人間は国民国家内部では表象されえず、市場の「リソース」となる。一方でそれと同期して現れる「エクスポジション」と呼ぶべきアート群。共同性を表象する効果を担ったイメージ(像)は失われたのか。結びつきの根拠が揺らいでいる状況のなか、共同体はどこに見出せるのか。アートの機能とナンシー、アガンベンなどの思想から、人間と共同性の関係を考察。
目次
序──共同体をめぐる問いと芸術作品
第一章 絵画に登場する「人々」──われわれはどこから来たのか
第二章 「人々」の位置──われわれは何者か
第三章 さらけ出される「生」──われわれはどこへ行くのか
第四章 出来事としての共同体──互いに露呈されるということ
第五章 イメージと人々と共同性
結び──共同性の経験として現れる美的経験
あとがき
注
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
90
古代ローマのイマギネス(死者や不在者の像)から進化した絵は、ルネサンスに民衆を見えるようにし、共同体を支えたという。この何かを表象する芸術は、マネによって日常を自立させ《展示する芸術》になる。やがて第二次大戦の強制収容所においてあるゆる表象が不可能になると、芸術は主体なき《剥き出しの生》を露呈し、私たち自身をも露呈する。即ちレヴィナスの《根源的なものの闇を見えるようにする》もの、ナンシーの《共存在を呼び出す》ものとしての芸術。私には現代思想への良い入門書でもあった。死と共同体と芸術について考えていきたい。2019/05/19
袖崎いたる
11
美術館に行って芸術作品を眺めていて「これを理解するには教養がいるな」というものとそうでないものとがあるなと思っていたら、それは表象と露呈とが対応している美術史的な転回があることを本書で知る。また、ぼくが〈小松左京‐夢枕獏〉の経由で教わった視線の原理性は、本書でも表象が主体を統制する向きにて論じられる。しかしそれは近代。現代では表象の不可能性に憑かれる。そこでは共同体とは主体の別言であり、イメージとは人々の家であり、イメージ抜きの存在はない。イメージはひとつの眺望を固定して提示する。そこに視線の統治はなる。2017/03/17
take
6
仕事上必要で(筆者には申し訳ないと思いつつ)2時間程で目を通した。絵画は表象(そこには無いものの代わりに別のものが再現すること)の営みであったこと、国民国家という見えないものを支える装置として機能したこと、近代絵画の特性は自立性・物質性・痕跡性にあったこと、アウシュビッツという表象不可能な体験を機に絵画が変貌し、物質的な変化を露呈するものとなったこと、そしてそこに人間の共同性が顕れていること、など勉強になった。2018/03/04
sk
5
美術批評入門として読んでも構わないと思う。そのくらい基本的な論点を織り混ぜつつ著者独自の見解へと明晰に導く優れた本。2017/08/25
はちめ
1
海外の論文の切り貼りだけで成りたっている。文章も内容もこなれておらず、図版も少ないのでほとんど伝わらなかった。博士論文とのことなので今後の精進を期待したい。2017/05/05




