内容説明
「ひさしや、ミミズク」今日も座敷牢の暗がりでツナは微笑む。山中の屋敷に住まう下半身不随の女の子が、ぼくの秘密の友達だ。彼女と会うには奇妙な条件があった。「怖い話」を聞かせるというその求めに応じるため、ぼくはもう十年、怪談蒐集に励んでいるのだが……。ツナとぼく(ミミズク)、夢と現(うつつ)、彼岸と此岸が恐怖によって繋がるとき、驚天動地のビジョンが“せかい”を変容させる――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まりも
67
とある田舎の山奥の屋敷に住まう少女と、その少女に怪談を語る為に会いに行く怖がりの少年を描いた物語。怪談×ボーイミーツガールに作者さんお得意のSF系独創的な世界観が組み合わさるとここまで面白くなるのか。歪でおどろおどろしいホラー要素に始まり、SF要素を絡めながら物語を進めていきラストはボーイミーツガールで〆る。この構成力の高さは本当に素晴らしいですね。「エルピス」を彷彿とさせる独自の世界観による読み応えと王道展開の面白さ。この二つの良いところを絶妙なバランスで調理した文句なしの傑作でした。帯に偽り無しやわ。2017/03/07
佐島楓
61
空間が立体的に感じられる臨場感があり、文章技術の高さがうかがえた。この作家さんの本は、ほかのものも読んでみたい。2017/03/06
ゆんこ姐さん@文豪かぶれなう
57
怖がりの瑞樹は、中一の時から10年間、密やかに行っている儀式がある。それは、田舎の町からも離れた場所にある屋敷の、そのまた奥の牢獄にいる少女、ツナに怖い話を聞かせること。そこから始まるストーリーはなかなかややこしく途中で投げ出しそうになったが、なんとか頑張って読んで、全てが繋がった時に納得できる内容だったのでよし。しかし設定が凝りすぎている。入院中じゃなかったら絶対付きの本に行ってたな。要注意作家。2017/02/26
よっち
55
山中にある屋敷の座敷牢で出会った少女ツナ。怖い話を聞かせることを条件に週一回会うことを許されたミミズクが十年目に転機を迎える物語。育ての親や友人にもツナのことを隠し続けてきたミミズクこと瑞樹。かつて投稿した怪談記事が縁で多津音一と出会ったことにより徐々に明かされてゆくツナを巡るからくり。丁寧で繊細なことばによって恐怖が描かれる一方で、瑞樹がきちんと向き合ったことで明らかになった真実は思わぬ奇跡にも繋がっていて、どうにか折り合いをつけて迎えたその結末は、これまでの想いが報われたとても素敵なものに思えました。2017/03/16
眠る山猫屋
46
ジャンル特定し難いが、良い物語でした。山間の隠されたような屋敷に「怖い話」をしに行く主人公。聴き手は座敷牢の中の少女。同時進行するのは、人間世界とは擦れ違うような情報生命体とでもいった存在たちの生存への旅。ふたつの異世界が重なり合う時、世界は終わるのか?なかなか優しい物語。主人公ミミズクが収集する怖い話は本当に怖いですが、それも伏線だったとは。白手袋の意味が判った時、ジワッと暖かさが差し込みます。2018/04/09