内容説明
深夜、かつて虐殺の舞台になったことで〈黒が丘(ムスタマキ)〉と呼ばれた場所で、男たちが“処刑”と称し一人の青年を銃殺した。死体発見の報を受けた警察は、禁止されている酒の取引に絡む殺人として処理したが、ケッキ巡査だけは納得していなかった。事件の陰に見え隠れする内戦の傷。敗北した側の人々が鬱屈を抱える町で、公正な捜査をおこなおうと苦悩するケッキ。はたして正義は果たされるのか? 推理の糸口賞受賞。フィンランドの語られざる闇を描く注目のミステリ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
紅はこべ
105
そういえばフィンランドの小説はミステリに限らず初めて。あれ、ムーミンってフィンランドだっけ?こんな辛く厳しい内戦があったなんて、自分の無知を恥じた。ロシア支援の赤衛隊とドイツ支援の白衛隊の争いって、前門の虎後門の狼みたいな…殺人事件が正義の旗の下にすっきり解決できるのは、民主主義あってのことかも。今の日本がこの小説のフィンランドに似ているように感じた。それにしても最近の海外のミステリって、男性主人公の性欲や性行為の細かな描写が多いな。警察小説、犯罪小説の形の歴史小説。2017/06/25
星落秋風五丈原
36
フィンランドに内戦があったとは知らなかった。弱者はとことん虐げられ強者は警察すら操れる。熊の異名を持つ刑事の活躍に期待。2019/05/21
空猫
30
1920年頃のフィンランドが舞台。内戦が終わったはずが、市民の傷と対立は続いていた。郊外の、住人はほぼ顔見知りの村で起こる殺人事件。けれど事件そのものよりも、そんな不安定な情勢の中で、必死で生きる市井の人々の姿の描写が胸を打つ。戦争で心を壊した夫を支えるヒルダ、露国から流れてきた娼婦紛いのヴェーラ、汲み取り業のベニヤミ…。フィンランドと言えばサウナだ。その中では外で纏う地位も名誉も無く、みな裸である。思想も職業も国籍も無関係だ。何故人は争うのか…はっきりとした結末はないのが、何とも哀しく、やるせなかった。2021/04/15
ほちょこ
27
北欧はフィンランドもスウェーデンもデンマークもノルウェーもはっぱ一絡げで「かわいい〜」とか「オシャレ〜」とか、はたまたムーミンとかマリメッコとかロイヤルコペンハーゲンとかとか、ステキ〜なイメージ。まぁここ数年、北欧ミステリを読み続けているので、そういうイメージはかなり払拭されたと思っていたが、やはり歴史は黒く重い。ことにフィンランドはソビエトやドイツの介入、さらに隣人を殺しあい告発するような苦しみの内戦時代があった。そういう歴史の一部を垣間見れたという意味でこの作品はよかった。2017/03/12
み
26
ジャケ読みした作品。フィンランドの1920年台なんて時代背景が全く分からず(^^;ロシアから独立したことすら知識なく…。何とも重たい空気の作品でした。2021/12/19