講談社学術文庫<br> 西太平洋の遠洋航海者

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講談社学術文庫
西太平洋の遠洋航海者

  • ISBN:9784062919852

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内容説明

ソウラヴァ(首飾り)とムワリ(腕輪)をそれぞれ逆方向に贈与していく不思議な交易「クラ」。「未開社会の経済人」は、浅ましい利得の動機に衝き動かされる存在なのか? 物々交換とは異なる原理がクラを駆動する。クラ交易は、魔術であり、芸術であり、人生の冒険なのだ。人類学の金字塔が示唆する「贈与する人」の知恵を探求する。(解説・中沢新一)

目次

訳者まえがき
序文  J・G・フレイザー
序 論 この研究の主題・方法・範囲
第一章 トロブリアンド諸島の住民
第二章 クラの本質
第三章 カヌーと航海
第四章 ワガの儀式的建造
第五章 カヌーの進水と儀式的訪問──トロブリアンド諸島の部族経済
第六章 渡洋遠征への出発
第七章 船団最初の停泊地ムワ
第八章 ピロルの内海を航行する
第九章 サルブウォイナの浜辺にて
第十章 ドブーにおけるクラ──交換の専門技術
第十一章 呪術とクラ
第十二章 クラの意味

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

harass

66
「世界の名著」に収録されているのを読む。1922年の文化人類学の古典。英国人の著者は、ニューギニアのある諸島で部族を取材する。諸島間の部族で行われる「クラ」という交易の実態と彼らの生活。クラとは無意味な装飾品が島を超えて次々に交換され、特定の日とルートで交換すべきという儀式なのだ。著者は同行取材し、彼らの呪術が支配する生活と行動の仕組みを考察し論じていく。彼らの文化生活様式は西洋人からみると異質だが高度で複雑なものだ。SFやファンタジー小説の設定を読んでいるようだった。後に多大な影響を与えた名著。2017/07/08

翔亀

38
【始原へ2】ニューギニア諸島の海洋民族の民族誌。人類学のまさに古典的名著だろう(1922年)。興奮した。本書は、自ら集落に住み込んで生活を何年間も共にするという長期参与観察を確立したことで知られる。旅行者や植民者の上滑りの(あるいは先入観をもった)観察でなく、生活丸ごとを観察、いや参加する。最初は異常体験だったのが、「まったく自然な毎日になっていく」(p38)。そのことにより「彼の世界について彼の見方を理解する」(p65)。そして「思弁的、仮説的見解を事実の説明とまぜこぜに」(p157)しない。だから↓2021/01/16

翔亀

37
【始原へ2-2】他の民族誌(ヌアー族)を読んでいて気になってしまった。この本の感想が長期参与観察という方法論に終始してしまったことを。だから追記です。海洋民族社会のまるごとすべてを体験しようとしたマリノフスキーの試みは、私たちと全く違う彼らの社会・政治・経済・文化の全体像を描いてみせたということでは完璧だ。こういう全体を把握したからこそ、「クラ」という特異な交易の仕組みを見出したのだろう。「クラ」は、ニューギニア諸島の島の間で円環状に首飾と腕輪が贈与される。A島→B島→C島へは首輪が贈与され、ぐるっと↓2021/01/20

かんやん

29
メラネシアの島々で行われるクラと呼ばれる交換、首飾りと腕輪をそれぞれ逆方向へ贈与してゆき、閉じた輪の中を宝物は周り続ける。通常の交易=物々交換を伴うが、それとは区別されるクラという伝統は、海を越える冒険であり、宝の所有(一時的)は誇りであり、話題の的である。カヌーの建造に立ち会い、航海に同行した著者にしか書けない血の通った民俗誌。クラは虚栄や嫉妬まで生み出す。人はヤムイモのみに生きるにあらず。同時に、原始共産制や自由な自然人といった概念がはっきりと否定されている。所有は誇示され、タブーが行動を規制する。2019/08/08

roughfractus02

13
著者がニューギニアで調査したのはクラ(モース『贈与論』でこの語は「環」と訳される)という海洋交易である。ヴァイグアという貝の首飾りを贈与するトロブリアンド諸島を時計回り/反時計回りする大掛かりな航海である。贈与する側は怒り、贈与される側は不機嫌な顔で交わされる場面等をビジュアルに記す本書は、贈与と返礼を繰り返し、文化が混ざり合い、部族間の連帯を作り、世界の不均衡を回復させる役割をクラに見出す。本書は、相手の理解に苦闘する著者の記述の向こうに、<出発-冒険-帰還>の円環を描き続ける物語の深層も垣間見せる。2024/02/23

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