内容説明
閉園後の遊園地。高原に立つ観覧車に乗り込んだ男は月に向かってゆっくりと夜空を上昇していく。いったい何のために? 去来するのは取り戻せぬ過去、甘美な記憶、見据えるべき未来──そして、仄かな、希望。ゴンドラが頂に到った時、男が目にしたものとは。長い道程の果てに訪れた「一瞬の奇跡」を描く表題作のほか、過去/現在の時間を魔術師のように操る作家が贈る、極上の八篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
しんたろー
235
何故か、年の瀬に荻原さんの短編集を読みたくなった……「やはり、はずさないなぁ」と溜息をつきながら8つの話をシミジミと味わった。生きていれば誰にでも「あの時、ああしていたら…」と振り返ったり後悔したりするもの…切なくもあるし泣きたいこともあるが、やり直せないからチョッとでも前向きに生きるだけ…そんな大人への応援歌が並んでいた。特に『トンネル鏡』『金魚』『胡瓜の馬』3つは中年男には沁みた(涙)。改めて、「短編の名手」と称えたい!(勿論『明日の約束』『金魚姫』などの長編も素晴らしい) 未読作品を楽しみにしたい♪2017/12/21
takaC
177
単行本でも読んだけど文庫はマイコレクション対象の大矢博子解説本なので再読。人々の人生後半にフォーカス合わせているからかなんとなく全体的に物悲しい。2017/03/12
KAZOO
174
荻原さんの直木賞作品集がよかったので少し読んでみようと思いこの短篇集を手に取りました。8つの短編が入っていてそれぞれの何気ない日常を時間を縦糸にしてそれぞれの生き方を見せてくれます。映画に向いているような気もします。私は表題作と「レシピ」が気に入りました。女性は強い。2018/05/21
のんちゃん
158
帯の「人生に二周目があればいいのに」の惹句で購入。8編からなる短編集。どのお話も登場人物が自分のもしくは自分と近しい人の半生や人生を振り返る内容となっている。8編もあるのに一気に読ませるのは流石、荻原さん。どの話もどこにでもある人生模様だが、この人が描くと感慨深い、ずしっと心に響くお話になる。そして、情景描写が上手な事にまた、感心する。実は夫も同じ本を同時期に購入していた!この惹句は人生半ばを過ぎた我々の年代にとって殺し文句なのかもしれない。2017/11/14
新地学@児童書病発動中
148
時間を主題にした短編集。素晴らしい内容で、深い印象を残す作品が並んでいる。過去と現在を自由に行き来する軽やかな筆致が印象に残った。過去を振り返るなとよく言われる。しかし、過去があって今の自分があることを、実感させてくれた。ノスタルジーは、現在を生き抜く力にもなるのかもしれない。私が好きなのは「金魚」。妻に先立たれた夫の灰色の日常に、金魚が灯りをともす。すべての生き物の命はつながっていて、一匹の金魚が人の命を救うこともあるのだ。夫が妻が若い時に行ったときの夏祭りの描写が、郷愁を帯びて美しかった。2018/05/09




