内容説明
「古典の文言(もんごん)なのか、わが言葉なのか、区別がつかないくらいになり、わが生を導く」ようになった『徒然草』からの原文を、中野孝次が選び抜いて“わが徒然草”を作りあげた。総ルビつきの原文と現代語訳、そして思いを込めた解説。南北朝の乱世を生きた兼好の永遠の古典が、時代を超え「今に生きる言葉」として蘇る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mae.dat
257
同じシリーズの『方丈記』が面白かったので、こちらも手にしました。他版の『徒然草』は折に触れて読む事があったのですけど。これは『世俗譚』『しばらく楽しぶ』等々12の項目を設けての傑作選を纏めています。それに、原文(読みがな付)、現代訳文、そして章毎に解説が続きます。この構成、分かりやすくて良いですね。そして中野さん曰く、兼好の哲学的な問いが根底にあるという。分かる。分からなくはないけど、達観されてみえるじゃないですか。賛同しますし、参考にもしますが、一般民には、そこまで割り切る事は難しくもある様に思うのよ。2023/03/03
HIRO1970
96
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️私のメンターになって頂いている中野孝次さん。感慨深いことに通算8冊目の本書は2004年の作品で中野さんが儚くなった年の最晩年の作品でした。前読の方丈記と違い243もの話が載っている徒然草は大著でとても全文掲載は出来ませんでしたが、その分、中野さんの選りすぐりの59編があたかもマスターリミックスの様に私を激しく酔わせました。電荷の高い本書の余韻は心地良く心に響きわたり中野さんがもういない事をあらためて突き付けられた気がします。でも書物ではいつでも対面可能なのでまたお逢いしたいと思います。2016/06/03
ちゃちゃ
76
『清貧の思想』の著者ならではの『徒然草』語り。兼好の人生観(死生観)、美学、物に囚われぬ精神の自由が、著者の思想とシンクロして魅力が浮き彫りにされる。今回、兼好の言葉が妙に身近に感じられたのは、年を重ねこれからの生き方を模索する日々に本書と出会ったからか。「日暮れ、道遠し。吾が生すでに蹉跎たり。諸縁を放下すべき時なり。」自分の中に、そんな潔さは無いと知りつつ、だからこそこういう境地への憧れがある。自己と向き合い、常に死を自覚して目の前の生を疎かにせず心静かに生きる。哲学書としての『徒然草』を堪能できた。2017/06/25
にいたけ
48
徒然草がテストにでまーす。参考書は何がいいですか?と言われたら迷わずこれを推す。編者の思いが強いかもしれないが厳選されててわかりやすいのが良い。何故これが書かれたのかは言ってはいけない。この書いてある文を素直に受け入れるのがこの本の正しい利用法。文章から自分の生き様を反省する。そういうのが正しい利用法だと思う。それもまた正しい。2021/05/07
アルピニア
40
第6回 日本の古典を読む(2017年6月)https://bookmeter.com/events/3935 「徒然草」全二百四十三段のうち五十九段しか取り上げられていないが、中野氏の練りに練った(であろう)構成で、徒然草の真髄を味わうことができたと思う。「死をいつも意識して生きよ」「日々命のあることを喜び楽しんで良い生き方を目指せ」そして良い生き方とは、「どのように生きるのが美しいかという美の問題になる。徒然草が一面では趣味の良し悪しを問う随筆になったのはそのためだ。(p228)」とても腑に落ちた。→2017/06/26