内容説明
婚礼直前に屋敷を逃げ出した竜子姫を助け、石川島で大捕物を仕掛けた“若様”奥山右京之介。まんまとせしめた大金を仲間に配り、風のように江戸から消えた。そして季節が秋から初冬へと移る頃、若様は播磨国仙崎藩にフラリと姿を現す。此度の狙いはなんと、豊臣秀吉が多田銀山に隠したと伝わる七億両もの埋蔵金。仙崎藩のお家騒動に便乗し、若様は仰天の秘策を打つ。芥川賞作家、入魂の書き下ろし。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
田中峰和
6
豊臣秀吉の埋蔵金の話として多田銀山は有名らしい。4億両は現在の貨幣価値にすると200兆円にもなる。若様こと奥山右京之助が織田信長の子孫なら、秀吉の埋蔵金が200年後に繋がる話があっても面白い。大坂夏の陣で秀頼は死んでおらず生き延びたという説から、秀頼がその嫡男国松を自分の従弟にあたる木下延俊にあずけたという仮説に繋がる。仮説を組み立てながら構築できるのは、時代小説の醍醐味。右京之助太刀始末のシリーズが6作目だとは知らなかった。剣道に打ち込む「九月の空」で芥川賞受賞した作家だけに剣劇場面は迫力あり。2017/08/05
とく たま
5
気の長いこのシリーズ、10年掛かりで6冊ってんだから出版されるたびに読み直さなきゃ筋書きが取れない。また前巻と関連してるからなおさらの事。20年も前に別名で初版が刊行されている。この巻は豊臣につながる埋蔵金に関わる藩や幕府の策謀になる。右京之介は織田につながる若様だが市井で気ままに生きている。いまだ謎は右京之介のミュータントなみの体技と、一冊に一、二行しか書かれない、ビルや飛行機や車などの平成の記憶。仲間の一人には昭和の記憶の持ち主もいる。惜しいな。もっとスムーズに出版されればベストセラーだぜ!望む謎解き2017/11/19
タツ フカガワ
4
前作で美貌の姫の政略婚阻止を助太刀し、ついでにちゃっかり五千両を懐に入れた若様、本作では姫が嫁ぐはずだった西国の小藩に赴き、ここでもやりたい放題。目的は豊臣秀吉が秘匿したという四億両! 荒唐無稽かつ天衣無縫、清濁併せ持つのが若様こと奥山右京之介の魅力(今回なぜか、柴田錬三郎の眠狂四郎を想起しました)、というか作者の語り口がじつにいい。物語はさらに意外な展開になって、相変わらず先が読めないところが楽しいシリーズです。2017/02/06
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