内容説明
人類から悪意を分離すれば、善き人(アグニオン)の世界が訪れるはず――。全てを有機神経知能(サピエンティア)に管理された未来社会で、恐るべき最終計画が始動した。人々の欲望を削ぎ、嫉妬も争いも根絶せんとする監理者に、少年たちはどう立ち向かうのか? 秀逸なツイートで世を沸かせ、マルチな才能で大注目の元NHKPR1号、圧巻のデビュー長篇!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
miroku
16
感情という本能と、その社会的制御装置としての理性。SF……なのか?2017/03/25
波多野七月
11
「この感情は、誰にも奪わせない」帯のこのフレーズを目にした瞬間、とんでもない物語が始まる予感がした。すべてが管理された世界で、自らの運命に抗う少年・ユジーン。生まれつき父の名を知らず、「何もない」という意味の名前を与えられた少年・ヌー。平行する二人の少年の視点で物語は進み、やがて世界のすべてが解き明かされていく。感情までもがコントロールされた世界は、はたして本当にユートピアなのか。あまりの完成度の高さとストーリー展開に、息を呑まずにはいられない。元NHKのTwitterの〈中の人〉が放つ、初の長編小説。2016/08/29
Etsuko
8
面白かった。どこかで読んだような観たようなのをmixした物語な気もしたが。この物語ほどではなくても世の中が向かっている気がして、行き着いてしまうとこれかもとヒヤッとした。正義、善き、正しい、それは人によって少しずつ定義が違っていて、違っているからこそ健全な世界が存在する。排除も強制もできない。と納得する部分もあり、しかし明らかに間違えている定義はどうするんだろうと疑問が。2018/01/28
西澤 隆
5
読んでいて思いだしたのは、村上春樹の「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」。二つの物語が並行して進む中で、どことなくリンクしていく。そして、最後にはあえて選び取る「意思」。トゲトゲした部分を切りそろえていく正しい世界は、実は相互監視がどんどん厳しくなっていく息苦しい社会であったり、ひとつの「正しさ」しか認めない幼稚な正義感の危うさであったり。「いろんなひとがいるよ」をあたりまえに受け止められないひとがどんどん増えていくように見える世の中で、こんな作品を書かずにいられない気持ち、想像してしまいました2017/08/28
くま
3
科学の知識がない人が書くならSience要素をぐんと薄くしてファンタジー側に持って行かないと恥ずかしい。カタカナルビが本当にうざいし、設定もどこかにあるようなだし、出だしはなんだか良くって引き込まれたから余計に残念。後半がだるいんだ。これは編集者がもっとばっさり削ってあげてシンプルにして登場人物の感情がもっとわかるようにしてあげるべきだったのでは?お2016/12/13