内容説明
中世とは、地方武士と都市庶民の時代だった。武士擡頭の契機となった保元の乱に筆を起こし、源頼朝とその前後の政治史をふまえて読み解く、一貫した歴史の視座。生活の場(都市・農村・家)と、その場での営為(芸能・文学・宗教・政治)から明かされる、自我がめざめた「個」の時代の相貌。十二世紀後半から十四世紀前半にかけての中世像が鮮やかに甦る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
41
保元の乱から幕府滅亡までを俯瞰した一冊。歴史の流れや幕府の統治機構だけではなく、京都、鎌倉といった都市や農村の動きまで、きちんと目配りがされている。しかしながら読んでいて面白いのはやはり源平合戦や蒙古襲来といった大きな事件。その他は承久の乱といった大きな動きもあるものの大体が内輪での権力争いが中心となっているためやはり地味なのよ。逆に他の歴史書ではあまり触れられていない幕府に対する朝廷の改革や、庶民の意識等が面白く感じられた。花押や鎌倉新仏教以外の仏教界の動き等、細かい所まで書かれていてそれもまた面白い。2014/11/27
中年サラリーマン
19
鎌倉時代を、歴史、政治、和歌、文学、花押など様々な視点から描いておりとても濃厚な作品である。一回読んだだけでは消化しきれない濃度。時間をおいて読み返したい。2014/01/25
キョートマン
4
タイトルからして京都と鎌倉を比較した都市論かと思ったが、中身は平安時代後期から鎌倉時代末期までの歴史本だった。鎌倉時代になっても朝廷内で公卿の覇権争いは続いていたのね。2024/02/16
蛭子戎
4
電子書籍の弊害としてその本の厚さが買う前には見えないことにある。本3冊分に相当する中世史の先生の論文集は読むのに苦労した。2018/04/30
竹香庵
2
長かった分だけどっしりと読みごたえあった。そもそもは『宇治十帖』で薫が普門品を誦経していたことを著者が「わざわざ具体的にそう書いた」のはなぜか、から始まった旅も、だいぶ遠くへたどり着いた気がする。途中『方丈記』で著者が方丈の庵に持ち込んだ本が法華経であったことを「わざわざ具体的にそう書いた」のはどういう意味なのか、も付け加わった。仏教が考えていることは結局何なのかと思ったら、私の興味は仏教の宗派の違いは何なのかだったことが判明。ようやく解ではなく問にたどり着けた。長い。長い分だけどっしりした読書の旅だわ。2020/03/14