内容説明
北には山脈が横たわり、海ほどもある湖をぐるりと囲んでいる森。そのまん中に穴がひとつ、口をあけている。ある日、大きな兄と小さな弟がその穴に落ちてしまった。深さおよそ7メートルの穴からどうしても出られず、何か月も木の根や虫を食べて極限状況を生きのびようとする。外界から遮断された世界で、弟は現実と怪奇と幻想が渾然一体となっためくるめく映像を見はじめる……。どうして兄弟の名前と年齢が明かされないのか。なぜ章番号が素数のみなのか。文章に織り交ぜられた不思議な暗号が示すものとは。著者によって綿密に構成され、さまざまな寓意に彩られた物語は、読後、驚愕とともに力強い感動をもたらす。暗黒時代を生きる大人のための寓話。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nuit@積読消化中
105
すごい本を読んでしまった。難しいことは語れないが、久々に読んでいて胸が苦しく、熱くなるような物語だった。読み終えた今、しばし放心状態である…。全くの予備知識なしに軽い気持ちで手に取ってしまったので、「ん?なんで穴に落ちたの?」など疑問を持ちつつもどんどん読むにつれ、瞬きの回数が減り、眼球が乾くほどに文章から目が離せないまま一気に最後まで読みきりました。この余韻、しばらく引きずりそうです。2017/04/12
Bugsy Malone
78
お気に入りさん達の感想を読んで是非とも読んでみたいと。7mの穴に落ちてしまった兄弟の壮絶なお話し。各章が素数であったり兄弟の会話の中に暗号が隠されていたりします。それ等の意味を解く前の素直な感想は、外の世界を象徴した穴の中で悲惨な状況に陥った兄弟の、虐げられ、怒りを糧にした革命家への成長物語だと感じてしまいました。ただ兄弟愛と使命に向けたひたむきさや希望とも受け取れるラストには、方法は別としても胸を打たれる思いが。スペインについては勉強不足なので実感が湧きにくかったのですが、それでも読んで良かったです。2019/11/06
めしいらず
72
広がるばかりの格差。兄弟が落ちたすり鉢を逆さまにした穴の構造は、そのまま社会のヒエラルキーの象徴。上層には富や力をほしいままにする少数の者たち。下層に行くほど逼塞する生活に喘ぐ人々で過密になっている。しかしその多くの者たちは反抗の意志を剥奪され、檻の中の動物のように従順だ。その一方、不条理への怒りの灯火を絶やさず、革命への意志を燃やし続ける者たちがいる。長い時間をかけて内側から起こるレジスタンスの波、その蜂起を期しているのだ。極限状況の中で虫や木の根を食らい泥水を啜る。それでも彼らが放っている聖性を見よ。2017/09/18
mii22.
71
読んだ本に登録はしたものの、この100頁少しの物語を私はどこまで理解できたのか。うっかり表紙につられて安易に読むべき本ではなかった!とにかく読んでいると気持ちが悪くなるのだ。そしてなかなか読み進められない、手強い本なのだ。不穏や恐怖感や嫌悪感とは別の気持ちの悪さ。寓意と暗喩に満ちた大人の童話の形はしているがそれだけではない。ただ何かに突き動かされ、はっと目を見開かされるような読後感はあった。解読出来ていない部分も多く何度か再読が必要だ。2018/03/13
アナーキー靴下
59
長いこと寓話が好きと思い込んでいて、本書も寓話とのことで読んだが、読み終えた今、寓話は苦手だったということに初めて気付いた。政治的な意図を持つものは特に。普段から感情全開で読書を楽しんでいるから、侵入者に乗っ取られやすい状態であるため、何かしらの意図を感じると心のファイアウォールが働いて楽しめなくなってしまうのだろう。一般的な小説であれば楽しめる内容だとしても、寓話の寓話たる誘導的メッセージ性が邪魔をするのだ。個人的に得た教訓として、「大人のための寓話」という謳い文句が添えられた本は今後は避けようと思う。2024/07/14
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