内容説明
8月8日、天皇陛下による異例の「お気持ち表明」から議論となっている天皇の生前退位。今後、皇室典範の改正をはじめ、国民的な議論になることは間違いない。では、我々は議論の本質をどう捉えればいいのだろうか。天皇家125代のうち実に57人が生前退位していることなどに触れつつ、カリスマ予備校講師が丁寧かつ詳細に「生前退位」についてレクチャーする。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
C-biscuit
9
図書館で借りる。昨今、話題になっている生前退位の問題について知りたくこの本を借りる。近代の天皇は仕組みとして生前退位はないが、過去の天皇には生前退位をしていた事例があり、その辺りが詳しく書かれている。天皇の呼称も、以前はミカドであり、これまでのミカドの役割や考え方、その思いが歴史から類推されている。生前退位がメインではなく天皇に注目しているのも特徴である。今に時代も象徴としての天皇であるが、不遇な時代の天皇も紹介されており、南北朝時代の天皇は在位を剥奪されている方ももある。ミカド視線の珍しい本である。2017/01/16
エリナ松岡
6
初めての1番乗りかな、と思ったら2番でした。表紙をみて少し心配しましたけど、極端な政治スタンスをゴリ押しするわけでもなく、むしろ丁寧に調べて理論武装した純粋な日本史の本ではないかと思います。今上天皇の生前退位議論は序説にあり、以降は章ごとに、実権が天皇以外に移った摂関政治から尊王攘夷あたりまでの9人の天皇をピックアップして、タイのプミポン国王の生涯を思い起こさせるような天皇達の時の権力者との対峙について解説しています。コアな歴史マニアの方にはぜひ内容の精査の意味でもぜひ読んでほしいところです。2016/10/31
takashi1982
3
予備校で日本史を担当し、現在はフリーで著述活動を行っている著者の新刊。「お言葉」以降、天皇制や生前退位についてメディアでは採り上げられることが多くなった。本書は前近代の天皇にスポットを当て、生前退位という言葉ではなく、本来用いられた譲位受禅という言葉を使う。そして、藤原摂関家や織豊政権、江戸幕府など、その時代の権力者と向き合いながら「ミカド」としていかにあろうとしたかを9人の天皇にスポットライトを当てながら探っていく。近代以降の天皇制を相対化しつつ日本史における天皇制を考える思考の補助線となるだろう。2017/01/18