内容説明
大江山(おおえやま)の酒呑(しゅてん)童子を退治した頼光(らいこう)、奥州蝦夷(えぞ)征伐を果たした田村麻呂(たむらまろ)、新羅(しらぎ)遠征の途上客死した利仁(りじん)将軍、平将門を討ち取った俵籐太(たわらとうた)――数々の伝説にいろどられていた「王朝武者」たち。お伽草子や説話文学の英雄物語から、彼らの知られざる実像を読み解く。本書には、平清盛も源頼朝も登場しない。「鎌倉以前」の兵(つわもの)たちが、世間からどう認知され、どう生きたか。そこには「王朝」という言葉から連想されるロマン的気分とは、異なる世界が宿されている。本書は「武士の原像」を王朝武者にさかのぼって探る野心的な試み。都鄙(とひ)往還のなかにルーツを求め、あるいは「暗殺の上手」として、あるいは「智恵ある者」として、中世武家社会を準備した兵たちの素顔を明らかにする。征夷大将軍とは異なる「武士の嫡流」があり得たのかもしれない。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
六点
65
空想と現実、国土の僻陬はおろか、異国までも跳梁する「武門貴族」がやがて暴力を職能とする武士に変わっていく姿を描いた本である。マージナルな存在が中心に到達するその姿は歴史のダイナミズムそのものである。2017/05/29
mimm
1
平安時代案外物騒!平安時代の「兵(つわもの)」「武者(むしゃ)」の生態を、虚実入り混じる説話で綴った一冊。雅やかなお貴族様が暗殺を指示したり、結構血生臭いこともあったり…と、なかなか楽しませていただきました。2015/12/13
kaeremakure
1
今昔物語などに出てくる武士の、摂関政治の時代における暴力のプロとしての不気味な存在感が好きなので読んでみたけど、この著者お得意の「武威の来歴」みたいな話がメインだった。「検非違使に逮捕された平致経の郎党による数件の暗殺の自供」といった史料は面白いので、その背景についても詳しく踏み込んでほしかった。2015/06/05
ハヤブサの竜
1
武士の成り立ちは、源氏の歴史でもあるんじゃなあ。平家からみたのも読んでみたい2014/10/05
ワタシ空想生命体
1
『今昔物語』の副読書として読んだ。『お伽草子』『今昔物語』などの説話から王朝武者の生態を説明する。2014/06/05