内容説明
吉本隆明は戦後最大の思想家!? 「学生反乱の時代」には熱狂的な読者を生み、多くの言論人が影響を受けた。だが、彼ら彼女らは吉本思想を「正しく」読み取っていただろうか? 「マチウ書試論」、転向論、「大衆の原像」論、『言語にとって美とはなにか』、『共同幻想論』など難解な吉本思想の核心を衝き、特異な読まれ方の真実を説く。補論「吉本隆明に見る“信”の構造」を収録した増補決定版!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まーくん
82
吉本隆明という名も「共同幻想」という書名も知っていたが読んだことはない。私は60年代後半~70年代前半の大学紛争真っただ中で学生時代を過ごしたが、学生運動には懐疑的な理系ノンポリ学生だった。私より数年年長の著者が過激派学生の教祖のような吉本隆明の難解と言われる著作のわけのわからん日本語を”翻訳”し、スジの通る日本語に書き直したら、結局つまらないことしか書かれてないことが露呈する。学生運動に熱を上げてた同級生は、こんな思想に踊らさせられていたのか?いや、彼らも吉本隆明なんか読んでいなかったに違いない。⇒2025/08/31
寺(いつも上品でごめんね)
68
批判的吉本隆明論。論ずるのは呉智英。ならば面白いに決まっている。という訳で一読。いやぁ難しかった(笑)。この難しさは吉本の特殊な言語感覚と文章の不味さによる所が大きい。これを呉が時にリライトしてから批判する。その意味でも本書は労作であると思う。難解を通り越した不可解で書かれた文章はリライトしてもやはり不可解であったりする。老年期の吉本の本の大半が語り形式であった事を改めて思う。語り形式がメインになったのは糸井重里による『悪人正機』からだろう。何故か呉は吉本を復活させた信者・糸井には触れていない。気になる。2016/10/14
うつしみ
15
昔から吉本隆明を懐疑的に見ていて、そのせいでよくわからないマウントを取られていた筆者が、積年の恨み晴らさんとばかりに思いの丈をぶちまけた本。吉本を「平易に話し出すとあまりにくだらないことを言っていることがむきだしになる」とこき下ろし、彼が影響力を持った60-80年頃には「よくわからんことがすごいという共同幻想」が支配していたと振り返り、それを「吉本大衆神学」(その教義は大衆不可侵、素人賛美、啓蒙否定である)と命名する。60年代には理想を掲げ観念を弄ぶ事が格好いい、みたいな時代思潮があった事と、2025/08/03
柳田
15
日本版『知の欺瞞』。吉本隆明の著作を分析、その思想が非論理的で無内容であることを明らかにしてゆく。小谷野敦が出たのが遅かった、と言っていたが、こういう本がちくま文庫で読めるようになっているのはいいことだと思う。まあ吉本は学者ではなく詩人だから、言っていることが論理的に正しくなくともさほど問題はない。読んだことはないが、今後も読むことはないだろう。まあこれしか読んでいないと誤解するところがあるだろうし、信者は酷い本だと言っているらしい。しかしドゥルーズやデリダならまだしも、吉本を理解しようという動機がない。2018/07/10
のり
13
吉本を論じた本はほとんど「礼賛」するようなベタ褒め本が多く,本書のような批判的位置から書かれた本は刺激的だった。また,その中身も当たっているように思われ,頷くことが多かった。私のような若い読者には吉本はただ「すごい人」と喧伝されるのみでその本質が掴み切れないところがあり,本書はそこにフィットする感覚があった。もっとも,吉本の姿勢や問題意識には感心させられる面も当然あるわけであり,その点は筆者も同様であり,安心した。魅力的なタイトルにふさわしい,魅力的な内容が終始一貫した態度で論ぜられ,わかりやすかった。2016/11/03