内容説明
「すみれがぼくにとってどれほど大事な、かけがえのない存在であったかということが、あらためて理解できた。すみれは彼女にしかできないやりかたで、ぼくをこの世につなぎ止めていたのだ」 「旅の連れ」という皮肉な名を持つ孤独な人工衛星のように、誰もが皆それぞれの軌道を描き続ける。 この広大な世界で、かわす言葉も結ぶ約束もなくすれ違い、別れ、そしてまたふとめぐりあうスプートニクの末裔たちの物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
426
とにかく読後の余韻が凄まじいです!本作では”スプートニク”を比喩に用いて、「心」「こちら側」「あちら側」のリンケージが綴られます。おそらく再読を重ねる毎に各々異なる感想が得られそうで何度でも楽しめるのではないかと思います。因みに、最後の方の「月」に係る描写は1Q84へと繋がって行くのですかね?2016/05/07
HIRO1970
319
⭐️⭐️⭐️とても村上さんらしい素敵なお話だと思います。どう来るかなと思っていたラストが少しだけ唐突な感じがしましたが、読後感も良い作品でした。毎回進化していく村上さんについて行くのはなかなか大変ですが、新たな世界観を創り出すのは簡単では無いですし、誰にでも出来ることでは無いので、毎回期待して作品を手にとってしまいます。次も楽しみです。2014/06/06
抹茶モナカ
275
『スメルジャコフ対織田信長家臣団』のCD-ROMのフォーラムを読むための予習として、久し振りに再読しました。以前は違和感しか感じなかった記憶があるけど、再読して感じたのは文章の素晴らしさ。いろいろな文体の集大成なんですね、確かに。諸説あるようだけれど、僕は、エンディングはハッピーエンドとしてとる立場でいたい。禁煙2年目の身としては、小道具で煙草が頻繁に出て来るのが、個人的に嫌だった。まあ、すみれがビートニク小説読む人だから仕方ないけど。ミュウの観覧車のエピソードは、印象的。会話文も良く、魅了されました。2016/01/07
tokko
245
「扉」を通って「別世界」と行き来する、「ねじまき鳥クロニクル」と「海辺のカフカ」のちょうど間にある中編小説。やはりすみれは井戸のような場所を通って、どこか別の世界に行ってしまったのだろうか?おそらくミュウが観覧車から見たもう一つの世界、もう一人のミュウが存在する世界を求めて。2011/10/06
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
198
22歳のすみれが落ちた記念碑的な恋。洗練された美しさをもつ大人の女性ミュウの存在はそれまでのすみれの世界を尽く覆す。そしてそんなすみれを見守る「僕」の存在。 音楽と読書、自分の内的なものを書き出すということ。アテネでの運命的に美しい休日。夏の夜の神秘的な深み、月と静けさ。美しい世界と不在の空白、圧倒的な孤独。描かれている世界が美しすぎて呆然と立ち止まりながらの読書。 この人の本は衝動的に読み返したくなる。何度でも、読み返す度に響くポイントが違ってきておもしろい。むしょうに好きな1冊。2019/01/31