内容説明
ヨーロッパとは何か。その成立にキリスト教が果たした役割とは――。ケルト的なるもの、ローマ的なるものに加えゲルマン的、東方的、ノルマン的、イスラム的等々、多様な要素を混和してヨーロッパは形成された。地中海古代世界を脱けだし、森林と原野の内陸部に繰り広げられたヨーロッパ世界創造のドラマを「中世人」の視点で鮮やかに描く中世通史。
目次
はじめに
第一章 掠奪のエウロペ
第二章 フランクの平和
第三章 冬の時代
第四章 甦る春
第五章 ヨーロッパの成立
第六章 十二世紀中世──感性と知性の景色
第七章 新生のヨーロッパ社会
第八章 王国の経営
第九章 展開の十三世紀
第十章 黒死病以後
第十一章 王と諸侯
おわりに
あとがき──学術文庫版刊行に寄せて
参考文献
年 表
写真提供および図版参考資料
地 図
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kasim
37
千年分の通史、ということでざっくりにならざるを得ないけど、各国史でなく総体としてのヨーロッパを見る大きな視点がとても面白かった。カトリック教会と神聖ローマ帝国が「ヨーロッパ」を精神的に支えたのだとすると、資本主義の欲望だけでEUが持ちこたえられないのはむしろ当然なのかもしれない。北部と南部で異なる文化圏のフランスの混乱、フランスからの撤退でむしろ国として小さくまとまって発展できるイギリス、ロンバルディアをホームと見なすあまりドイツ地域を放って諸侯を強めてしまう神聖ローマなど、それぞれの事情がある。2019/07/17
fseigojp
27
6世紀から15世紀を中世とよび、16世紀から18世紀を近世と呼ぶようだ 2017/04/22
Francis
18
10年間も積読していた本。西洋史家による中世ヨーロッパ史の通史。これは面白かった。もっとも他のレビュワーの方も言っているように、相当の予備知識がないと読めないとは思う。私は中世ヨーロッパ史は興味あったし、参考文献に挙げられている鯖田豊之さんの「ヨーロッパ中世」もとても面白く読めていたからこの本もとても面白く読むことが出来た。今危機にあるEUがどうなるのか、考えるためにも参考になる本だと思う。2016/12/16
かんがく
15
ゲルマンの大移動から百年戦争までの約1000年間をまんべんなく記述。聞きなれないカタカナが次々に出てきて、逐一調べながらゆっくり読んだ。近代国家の概念とは全く異なるため、教皇、王、諸侯の関係を系図とともに整理しながらじっくり追っていく必要がある。イギリス・フランス・ドイツを中心に、どのような社会の変化があったかが書かれており、順序立てが整然としていて理解しやすい。まだ混乱している部分があるが、中世ヨーロッパに対してだいぶ理解が進んだ。ただ、高校世界史レベルの知識はないと読めないと思う。2019/02/14
桜子
14
中世ヨーロッパの権力構造をざっと読むにはどれがいいだろうと探していた時にこの書籍を選びました。学術用語も多く、メモしたり調べながら読み進めたため読了に時間かかりました。加えて、独特な文章のため1度読んだだけでは全て理解できない。中世ヨーロッパを現代に置き換えると、ECから始まり現在のEU考察をする地政学的な意味合いでも参考になりそう。再読して更に権力構造の知識を深めたいです。