内容説明
大きな橋から落下し、気づくと三途の川に辿り着いていた小学六年生の叶人は、事故か自殺か、それとも殺されたのか死因がわからず、そこで足留めに。やがて三途の渡し守で江戸時代の男と思しき十蔵と虎之助を手伝い、死者を無事に黄泉の国へ送り出すための破天荒な仕事をすることになる。それは叶人の行く末を左右する運命的なミッションとなった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんたろー
192
「三途の川」渡しの手伝いをする事になった小6男子が、様々な事情で現世に未練を残す人々に関わってゆく…漫画チックな物語ながら「天国」「地獄」「転生」などを独自の解釈で判り易く設定しているのでシーンが目に浮かぶ。連作短編形式でベタな人情劇が展開されているので感情移入も容易だった。最後に主人公が自分に向き合う話になって、それまでの経験が活かされているのも巧い構成で、時折挟まれるユーモアと相まって気持ち良く応援できた。西條さん自身の代表作『千年鬼』には及ばないが、職人芸的なファンタジーとして充分に楽しめた👍2019/03/06
さてさて
166
『地獄というのは、別に人間をこらしめるためのものじゃない』、そんな言葉の先に今まで抱いてきた『地獄』や『天国』のイメージがすっかり塗り替えられるこの作品。そこには『三途の川は、乗せた客によって流れも速さも変わるのだ』という『死者の気持ち』を『敏感に嗅ぎとる』『三途の川』で『渡し守』を経験し、自身を見つめていく叶人の極めてシリアスな物語が描かれていました。“時代小説”の名手である西條さんが絶品の構成力と想像力で魅せてくださるこの作品。”時代小説”と”ファンタジー小説”の融合の先に生まれた傑作だと思いました。2022/11/23
タイ子
84
人は死んだらどこに行く?天国か地獄か。いや、その前に三途の川を渡らねば…。12歳の少年、叶人がある日橋から落ちて瀕死の重傷を負い病院に。家族の見守る中叶人の魂だけがフワフワと。気が付くとそこは三途の川。船の渡し守が黄泉の国へと運んでいる光景が。そこから物語は始まるのです。渡し守を手伝うことになった叶人は江戸時代の武士2人とあの世とこの世を往復することに。この世に残された者、残して死んだ者たちの心残りが切ないです。読む前から叶人の運命はわかるんだけど、ラストは意外にほろりとさせられる。西條さんらしい一作。2018/10/18
papako
79
久々の作者の作品。事故か自殺か他殺か、川に落ちて意識不明になってしまった叶人が三途の川に紛れ込んてしまい、渡し人十蔵や虎之助と一緒に死者を渡す。その事故の原因から逃げている叶人は戻れない。死者たちの想いを叶えながら、最後はきちんと向き合い自分に戻る。結構話は重くて苦い。十蔵や虎之助にも救いがあり、前向きに終わるのでよかったけど、手放しに面白いとは思えなかった。三途の川って海外の神話にもあるのね。世界共通の死後観なのね。2019/12/14
優希
77
三途の川の渡し守を手伝うことになった叶人。様々な形で現世と関わることで見えないものも見えてきました。漫画っぽさはありますが、抱えている事情が深いと思います。2019/10/15