内容説明
博多の仏師・清三郎は木に仏性(ぶっしょう)を見出せず、三年間、京へ修行に上る。妻のおゆきは師匠の娘だ。戻ると、師匠は賊に殺され、妻は辱められ行方不明になっていた。ようやく妻が豪商・伊藤小左衛門の世話になっていると判明。お抱え仏師に志願し、十一面観音菩薩像を彫り上げた。しかし、抜け荷の咎(とが)で小左衛門は磔(はりつけ)となり、おゆきも姫島に流罪になってしまう。おゆきを救うため、清三郎も島へ…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふじさん
92
貧乏下士の三男として生まれた清三郎は、仏師・高坂浄雲に弟子入りするが、木に仏性を見出せず、3年間、京に修行に上る。修行を終えて戻ると浄雲は賊に殺され、妻のおゆきは辱められ行方不明になっていた。おゆきは、伊藤小左衛門に命を救われ、世話になっていることが分かるが、おゆきは清三郎の元には戻らない。抜け荷の咎で小左衛門が磔となり、おゆきも流罪になる。おゆきを救うために清三郎も島に入るが、次々に災いが襲い掛かる。最後には、幸せな結末が待っているが、清三郎とおゆきの人生は波瀾万丈、よくぞ生き残れたと思わざるを得ない。2023/10/26
優希
57
仏師が主人公の作品でした。木に仏性を見出せなくなり、妻・おゆきを残し、京へ上る清三郎。その間に行方不明になるおゆきですが、世話先を見つけられたのも愛故なのかもしれません。流罪になったおゆきを追うように自らも島へ流れる清三郎の想いが刺さります。切なさを味わずにはいられません。2023/01/22
Smileえっちゃん
56
葉室さんは大好きな作家さんです。いつも主人公の生き方にあこがれを持っていましたが、今回はちょっと違って感じました。師匠にのぞまれ、師匠の娘、おゆきと結婚した仏師の清三郎。師匠の反対を押し切って、京に修行に出るが3年間音沙汰なし。帰ってみれば師匠は殺され、おゆきは辱めを受け行方知れず・・探し当て復縁を迫るが断られる。余りにも身勝手すぎるのでは・・最後は流罪となったおゆきを追って島に渡り、命がけで守り通すが悲しい別れになる。愛情というより執着に感じられ共感出来なかった。仏像の事は興味を持って読むことが出来た。2017/11/21
優希
48
思い通りに仏が彫れない仏師・清三郎とおゆきの間の夫婦愛を強く感じました。流罪になったおゆきを救うため、自らも島へ流れる清三郎のおゆきを想う心が刺さります。切なくて面白い1冊でした。2022/05/15
のびすけ
31
思うように仏像を彫ることができずにいる仏師・清三郎。流罪となったおゆきを追って島へと渡る‥。ひたすらおゆきを想い続ける清三郎と、ひたすら清三郎を拒み続けるおゆき。島抜けを謀る罪人たちとの闘いの末に、ようやくおゆきの本心を知ることができた清三郎であったが‥。何とも切ない結末でした。仏像を彫る「心」の奥深い世界がとても面白かった。2021/04/01