講談社文芸文庫<br> 夜の靴 微笑

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講談社文芸文庫
夜の靴 微笑

  • 著者名:横光利一【著】
  • 価格 ¥1,089(本体¥990)
  • 講談社(2017/01発売)
  • ポイント 9pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784061963078

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内容説明

戦時下、畢生の大作『旅愁』を書いて東北地方の僻村に疎開していた横光利一は、そこで日本の敗戦を知る。国敗れた山河を叙し、身辺を語り、困難な己れの精神の再生を祈念しつつ綴った日記体長篇小説『夜の靴』。数学の天才の一青年に静かな共感をよせる『微笑』。時代と誠実に格闘しつつ逝った横光利一最晩年の2篇。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

藤月はな(灯れ松明の火)

76
横光利一は文章を以て戦争に協力したという理由で戦後、糾弾された文豪の一人でもあった。「夜の靴」はそんな彼の衝撃と疎開先での再生が描かれている。余りにもあけすけな言い方で村人から倦厭されている久右衛門に好感を抱いたりする姿は横光氏の無邪気さを表すかのよう。そして都市での食糧不足が稼ぎ時な田舎での様子は、昔、祖母の聞いた戦争中の田舎の話とピタリと合う。「微笑み」は殺人光線を研究しながらもその無垢さと人の良さで誰からも好かれた栖方。「狂気」だと言われた彼の純粋さと何かに左右される世の中の混沌さ。どちらも恐ろしい2018/12/29

hoiminsakura

11
夜の靴。山形の山村に疎開していた頃を描いた日記形式の小説。敗戦の知らせを受けた時から東京に戻る日までの、本家、別家の人々の人間模様と農村の様子を著者の目を通して観察し冴え冴えと語る。晩年の作品であり、横光利一の鋭利な知性と豊かな感性と優しさが共存する傑作。今まで読んだ中でこの作品が一番好きな理由は、著者の人間性が素直に記されているからだと思う。(反面「蝿」も好きだったりするが)2024/02/19

イタロー

2
夜の靴……敗戦後の心の遍歴を、身を寄せた地方のとある村の素描とともに書いた佳品。皮肉にも、横光利一の良い面が十分に出ている。山形が舞台だが、弟子の森敦との関連もきになるところ。2021/11/16

ダージリン

2
横光利一の作品は久し振りに読んでみたが、これまで読んだ作品とは受ける印象が異なっている。もう少し観念的なものを予想していたが、特に「夜の靴」は肩の力が抜けたかのような作品。山形の僻村の人間模様や、夫婦の会話など、どこか瑞々しさを感じさせるような筆致だ。「微笑」の方は一風変わっていて妙な恐ろしさを感じさせて面白い。2018/01/14

Shue*

2
自分が戦後の横光文学に照準を絞って研究しようと志すに至った一冊。 「微笑」は横光の作品の中で最も好きな作品であるから、語るのを控えるとして、あれだけ戦争責任を塗りつけられた横光が、寒村で「夜の靴」を書き連ねたその思いを考えるだけでも、涙があふれる。 多くの示唆を含む名言で溢れた「夜の靴」。愛情を確かめ合う作業は平和裏の戦争であり、愛国か敵愾心かのどちらかに加担せずに戦時を免れなかった人たちの祈願が、不潔ではなかったという横光の、孤独な双眸が、目に浮かぶようである。2008/07/01

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