内容説明
新しい言葉の創造によって“時代”が鼓舞される作品、そういう作品を発表し続けて来た文学者・大江健三郎の20代後半の代表的長篇傑作『叫び声』。現代を生きる孤独な青春の“夢”と“挫折”を鋭く追求し、普遍の“青春の意味”と“青春の幻影”を描いた秀作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
360
かつて、高校生のころ熱狂して読んだ大江の作品群の中の1冊。高校生だった僕たちは、大江を導き手としてサルトルを知ったのだった。あの頃、僕たちにとって大江の小説はバイブルのような存在だった。作中冒頭の《黄金の青春の時》という言葉に僕たちは熱狂していた。それが、最初から崩壊の予兆を孕んでいるにも関わらず。否、むしろそうだからこそなのだろう。虎も鷹男も、それぞれの破滅への道を走り続ける。そして「僕」は、その存在の意義を失ってゆく。大江ほどに、若さゆえのもどかしさと痛みとを描いて見せてくれる作家はいなかったのだ。2016/11/30
Vakira
53
高校の頃に読んだが、記憶なし。では、あまり大した事ないかしら?なんて思いながら、健さんの追悼読書として再び手に取る。1963年の作品、今からちょうど60年前。これを書く前は作家としては死んでいたと自己評価、確かに入魂の凄い作品に仕上がっている。この作品の後に乗りに乗って数々の名作を世に送り出すことになる。主人公は20歳の大学生。その若さだから有り余るエネルギーで性と暴力の表現、半端ない。初っ端からバイクとトラックの衝突事故場面。吐き気を催すほどの血の滴り描写。それは、主人公達を待ち受けている死のメタファー2023/10/19
ころこ
46
「男色家のアメリカ人が東京につくったホモ・セクシュアルのハレム!」と社会から断じられるセルベゾフ、黒人ハーフの虎、朝鮮ハーフの鷹男、そして僕、僕らはもう肉親で決して別れられない関係だという気になっていた。僕たちは独自の関係性を保っていきたい閉ざされの感触を「友人たち号」と名付けられたヨットに託し、同時に日本の鬱屈した気分から遠洋にこぎだす開かれも象徴させていたのだ。大江の文章は、読み進めるのに読者に出力が必要だ。しかし一部の小説には、それが必要ない軽いものがある。本作はそのどちらでもない。読み易いが、マン2024/11/20
harass
46
本棚を見なおしていてぱっと再読と引用『海へ快楽のためにきたというのではない、板ガラス運搬のオートバイを疾走させてきた屈強の若者が、じつに象のように凄じい印象をあたえるべく設計されたらしい、無闇に巨大なトラックに追突して、そのまま、泥がツララのようについているトラックの車覆いと、自分を裏切ったオートバイのあいだに、紅い刺のようにささっていた。血まみれだった。』2016/03/04
ω
41
これもまた傑作ω 瑞々しい青春系の叫び声かと思いきや…。。展開も大好み。芽むしり仔撃ちを書いてから4年、大江は小説が書けなくなったそうな…そして27歳頃、本作を書き上げて危機を脱出😺!! 1400円もしたのに解説的なのが長くてモヤっとする!2023/08/11
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