岩波文庫 漱石詩注

著者名：吉川幸次郎

岩波書店（2016/12発売）

• ISBN：9784003315224

内容説明

漢詩が，殊に簡潔で締まった句が好きだ，といっていた漱石は，みずからも折々に漢詩を書き，『明暗』執筆のなかばからの100日間は，それを日課とした．漢詩は小説と同じく漱石の思想の表現である，と評した中国文学者が，学生時代から死の直前までに作られたうち160首に丹念な注釈を加え，その思想遍歴の跡を描き出す．

目次

目　　次
　　　序

　漱石詩注　第一
　　山路に楓を観る　明治二十二年十一月
　　函山雑咏　八首　明治二十三年九月
　　友の元函根に到るを送る　三首　同前
　　帰途の口号　二首　二首同前
　　御返事咒文
　　無　題
　　無　題　四首
　　無　題
　　無　題
　　丙申五月、恕卿の居る所の庭前に霊芝を生ず　五首
　　無　題
　　春　興　明治三十一年三月
　　失　題　同前
　　春日静坐　同前
　　菜花黄　同前
　　客中春に逢いて子規に寄す　明治三十二年
　　無　題　同前
　　古別離　明治三十二年四月
　　失　題　同前
　　無　題　明治三十三年
　　無　題　同前
　　無　題　同前

　漱石詩注　第二
　　無　題　明治四十三年七月三十一日
　　無　題　明治四十三年九月二十日
　　無　題　明治四十三年九月二十二日
　　無　題　明治四十三年九月二十五日
　　無　題　明治四十三年九月二十九日
　　無　題　明治四十三年十月一日
　　無　題　明治四十三年十月二日
　　無　題　明治四十三年十月四日
　　無　題　明治四十三年十月五日
　　無　題　明治四十三年十月六日
　　無　題　明治四十三年十月七日
　　無　題　明治四十三年十月八日
　　無　題　明治四十三年十月十日
　　無　題　明治四十三年十月
　　無　題　明治四十三年十月二十五日
　　無　題　明治四十三年十月二十七日
　　無　題　明治四十三年十月池辺三山宛
　　春日偶成　明治四十五年五月二十四日
　　無　題　明治四十五年六月
　　無　題　同前
　　無　題　同前
　　無　題　明治四十五年七月
　　横山画伯の画を恵まるるに酬ゆ　未定稿
　　横山画伯の画を恵まるるに酬ゆ
　　明治百家短冊帖序
　　妙雲寺に瀑を観る　大正元年九月
　　自画に題す　大正元年十一月
　　自画に題す
　　無　題
　　画竹に題す
　　無　題
　　墨竹に題す　大正三年
　　自画に題す
　　自画に題す　大正三年二月
　　自画に題す　大正三年
　　健堂先生の自寿詩及び七寿の杯を得、次韻して以って祝す　同前
　　閑居偶成、臨風詞兄に似す　同前
　　遊子吟　森円月に贈る　大正三年二月
　　自画に題す
　　自画に題す　大正三年十一月
　　自画に題す　大正四年四月
　　西川一草亭の画に題す　大正四年九月
　　自画に題す
　　結城素明の画に題す
　　自画に題す　大正五年一月
　　自画に題す　大正五年春
　　自画に題す　同前

　漱石詩注　第三
　　無　題　大正五年八月十四日夜
　　無　題　八月十五日
　　無　題　同前
　　無　題　八月十六日
　　無　題　同前
　　無　題　八月十九日
　　無　題　八月二十日
　　無　題　八月二十一日
　　無　題　同前
　　無　題　八月二十二日
　　無　題　八月二十三日
　　無　題　八月二十六日
　　無　題　八月二十八日
　　無　題　八月二十九日
　　無　題　八月三十日
　　無　題　同前
　　無　題　九月一日
　　無　題　同前
　　無　題　九月二日
　　無　題　同前
　　無　題　九月三日
　　無　題　九月四日
　　無　題　同前
　　無　題　九月五日
　　無　題　九月六日
　　無　題　九月九日
　　無　題　九月十日
　　無　題　九月十一日
　　無　題　九月十二日
　　無　題　九月十三日
　　無　題　同前
　　無　題　九月十五日
　　無　題　九月十六日
　　無　題　九月十七日
　　無　題　九月十八日
　　無　題　九月十九日
　　無　題　九月二十日
　　無　題　九月二十二日
　　無　題　九月二十三日
　　無　題　同前
　　無　題　九月二十四日
　　無　題　九月二十五日
　　無　題　九月二十六日
　　無　題　九月二十七日
　　無　題　九月二十九日
　　無　題　九月三十日
　　無　題　十月一日
　　無　題　十月二日
　　無　題　十月三日
　　無　題　十月四日
　　無　題　十月六日
　　無　題　十月七日
　　無　題　十月八日
　　無　題　十月九日
　　無　題　十月十日
　　無　題　十月十一日
　　無　題　十月十二日
　　無　題　十月十五日
　　無　題　十月十六日
　　無　題　十月十七日
　　無　題　十月十八日
　　無　題　十月十九日
　　無　題　十月二十日
　　無　題　十月二十一日
　　無　題　三首　同前
　　無　題　三首　十月二十二日
　　元成禅人、徳源の大会自り、鉢を回らして余の家に到り、淹留すること旬日　十月三十一日
　　丙辰十月、余、元成禅人の為めに墨竹を作る　十一月一日
　　無　題　十一月十三日
　　無　題　十一月十九日
　　無　題　十一月二十日夜
　　　漱石詩集拾遺訳注
　　鴻の台　二首
　　画に題す
　　奥田詞兄の国に帰るを送る
　　離愁　友人の韻に次す
　　即　時
　　即　時　二首
　　七艸集評
　　〔無題　五言絶句〕
　　〔無題　七言絶句〕
　　〔無題　五言絶句〕
　　正岡子規の小照を恵まるるを謝し其の贈る所の詩の韻に次して却呈す
　　〔無題　五言絶句〕
　　大井川舟中
　　　付　録
　　「木屑録」より　十四首
　　自画に題す
　　　解　説（一海知義）
　　　詩句索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

[うぴー]

正直なところ漢詩としての芸術性はよく分からなかったものの、中国詩や故事に対する造詣の深さや、ただ典故を用いるのみならず部分的にアレンジを加えることで新たな表現として用いている点に、漢詩に関する漱石のこだわりや、表現方法の一つとして果たす役割の大きさがうかがえた。

2022/11/30

[零水亭]

（元の新書版、数首増補した文庫版、両方読みました。家庭の事情で手放してしまいましたが…）　正岡子規が生きていた頃の詩には子規からの辛口の寸評が加えられています。読み始めた頃は「なんだコイツ？」と思っていましたが、今考えると、友情あっての辛口コメントだったのでしょう。羨ましく思います。最近は死の間際まで七言律詩（本職の漢詩人にさえ作りにくいとされます）を何故毎日作り続けたのか、私、気になります！　和訳は付いてなかったと思いますが、吉川先生が「偉大な日本人の詩に和訳を付けるのは失礼」と考えたのでしょうか？

2019/08/01

[sukham]

編者の吉川幸次郎曰く、「…先生〔夏目漱石のこと〕の漢語は、その語法についていえば、きわめて正確である。いわゆる日本漢文、日本漢詩では、断じてない。中国人で先生の詩を激賞するものがある…」さらりと評している。しかしながら、これは瞠目すべきこと。非母語・外国語で創作した文学作品として、当該の言語を母語とする人達に「激賞」されるとは！!管見によれば、日本語を母語とする人で匹敵する方は多和田葉子さん(のみ)か。漱石の生きた時代から平成時代に至る100年程の期間に限定しても。漱石・明治・漢学のおそるべき底力に感服。

2019/12/10

[Haruka Fukuhara]

漱石の文学は次々と新しい試みが見られて同一人物とは思えないほどだが、その裏にはこの漢詩集に見られるような膨大な教養があったのだろう。手元にあるのは1967年初版の新書版だが、この内容が新書になって広く読まれたというのはすごい時代だと思う。そうした教養の割にその時代に育った人々が取り立てて仰ぎ見るような存在とも思われないのが不思議だが。

2017/01/17

[深川路]

死に直面して解ったこと、感じたことが綴られている修善寺の大患後の漢詩(漱石詩注　第二)が一番、私には興味深く読めました。

2011/04/05