内容説明
人間は「考えない葦」である!?──長大な『パンセ』から気になる一節を取り上げ、意外なエピソードをまじえながら読み解く楽しみ。それぞれ読み切りで書かれた40章から成る本書は、1日1章、40日で『パンセ』を完全制覇できる手軽なガイドブックです。ヨーロッパ最高の知性とともに生きる豊かな毎日を手に入れよう!
目次
はじめに
凡 例
0 『パンセ』の成り立ち
1 馬 鹿
2 人を愛する
3 不快を耐えよ
4 想像力
5 動物たち
6 機械と習慣
コラム1 パスカルとたばこ
7 三つの秩序
8 圧 政
9 蚊の力
10 理性と直感
11 適量の酒
12 二つの無限
13 幾何学の精神と繊細の精神
コラム2 パスカルと音楽
14 笑 い
15 三つの邪欲
16 自我は憎むべきものである
17 手足とからだ
18 順 序
19 分け前
20 不確実なもののために努力すること
コラム3 パスカルと馬車
21 知識の空しさ
22 民衆の健全な意見
23 多様性と変化
24 快のモデルと自然な弁論
25 オネットム
26 考えない葦
27 気晴らし
コラム4 パスカルと偽名
28 メメント・モリ
29 ユダヤ人
30 隠れたる神
31 パンと葡萄酒
32 無 知
33 モンテーニュ
34 恐 れ
コラム5 パスカルと演劇
35 メモリアル
36 ピュロン主義と独断論
37 自発的錯誤
38 賭 け
39 地 獄
40 来世を望むこと
パスカル入門のための参考文献
あとがき
引用断章リスト
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
132
パスカルつながりで最近出たこの本を読んでみました。パンセを40の章に分けてそれぞれ題名をつけてわかりやすく説明してくれます。「分け前」のところでは確率論が出てきます。数学的才能もかなりのものだったということなのでしょう。また途中にコラムが5つほどあり、パスカルの普段着のような面も教えてくれます。楽しい本でした。2017/03/04
ころこ
37
第7章に「身体」「精神」「慈愛」とあり、第12章にも「天空」「その先」「原子」とあり、極小に思えた空間が同じ比率で極大の世界を包含している一方で、「中間」とは人間の別名だといいます。この「中間」は第11章でも「中庸」という理想には程遠いあり方をアイロニカルに表現するために登場します。壮大な世界観をみせつつ、対照的に強調される卑小な人間の姿は、表現しきってしまうと卑小さの表現にはならない。そこで、分かる人には分かる言い切らない書き方の工夫があり、そこに味わいをみつけるのが『パンセ』を読むコツだと分かります。2021/06/09
ラウリスタ~
17
この本の魅力はパスカルに「でも先生、ちょっとそりゃ無理がありませんかね」といちいち茶々を入れながら、『パンセ』に飲み込まれることなくパンセを読む道を示すところにある。「賭けの断章」に関する3章分は見事で、一般的な理解(神ありに賭けた方がお得!)を二転三転させた所にまで読者を引っ張っていく。コラムは必見、馬車に関する章などは最近調査されたのだろう。現代日本人(非キリスト教徒)がパンセをそのまま読んでも到底説得されることはないだろう、それでも護教論という意図を超えたところの普遍性が我々をいつまでも魅了する。2019/02/01
かふ
16
パスカル『パンセ』の言葉をキーワード的に40のトピックで解説した本である。パスカルの言葉は逆説の論理で哲学者というより詩人に近いと思う。有名な「人間は一本の葦にすぎない」も論理的には破綻しているが、詩として読めば葦は象徴的で実直なまでの言葉なのである。直感という論理学よりは詩的言語にふくまれるのではないか?勿論、そこから哲学的に論理を構築していくのは哲学(論理学)と言えるのかもしれない。https://note.com/aoyadokari/n/n4ce20ee1250b?from=notice2022/12/06
ざっきい
6
ふと目につき読んだ本。「パンセ」の字句だけではなく、17世紀という背景も紹介しているところが良い。宗教改革を受けてのジャンセニスム、ポールロワイヤル修道院、デカルトの合理主義、ピュロン主義といった思想や、公共交通の始まりや演芸の影響など面白い。最後に、「大衆の反逆」の著者オルテガは、「しかし私は、誰かがパスカルを引用したら用心すべきだということをかなり前から知っている」と言ったとか。2017/01/12