内容説明
池波正太郎が自らつづるその青春時代とは──関東大震災の年に生まれ、小学校卒業後すぐに就職。勤め先を転々としつつ、芝居見物を楽しみ、美食を覚え、吉原にも通う早熟な十代を過ごす。戦時中は旋盤工として働き、やがて海兵団に入団。戦後、脚本家への道を歩み始める。両親や親族との思い出、友人や恩師との出会いを懐かしく振り返る清々しい回想記。時代小説「同門の宴」も収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おさむ
43
池波正太郎さんの新たな一面を見ました。戦前から戦後にかけての波瀾万丈の青春時代を描いているのですが、暗さがまったくない。このからっとした楽天さは江戸っ子のなせる技か、天性からか。同時期を生きた司馬遼太郎とは好対象ですね(注.司馬さんが暗いということではありません。池波さんが明る過ぎるのですw)2016/04/19
Tadashi_N
27
良い作品を書くためには、色んな経験が必要。映画と観劇が、それの主体。2017/03/14
くみ
21
池波先生の幼少時代から小説家になるまでの自伝エッセイ。両親の離婚から小学校卒業で株屋に奉公に。お金があるから美食、歌舞伎見物はもちろん吉原へ通ってお馴染みをつくったりと一通りのことは経験済み。それが戦争が始まって旋盤工として徴用に。そして徴兵。どの経験ものちに池波作品を生み出す基礎になっているようで、特に旋盤工体験は先生にとって大きかったようだ。悲しい辛かったであろうエピソードも先生の度量に包まれてどれも温かく感じる。池波作品はエッセイの他は「真田太平記」しか読んだことないので来年は小説も読んでみたい!2017/12/31
ぐうぐう
14
幼少時代から、小説家として成功するまでの回想記。芸術肌の従兄からの映画、芝居の影響、株屋への就職、吉原通い、そして海軍への召集。そのどれもが、小説家としての池波正太郎の血肉となっていることがすごい。読んでいると、人生において、無駄なことなど何ひとつないのだということに気付かされる。「(略)戦前の私の青春にも、戦後の、ひたむきに猛然として芝居に打ちこんだ第二の青春にも、何ら悔いひとつないことがわかった。」2012/01/10
あまね
11
読み終わった瞬間、「面白かったな。これ。」とつぶやいてしまいました。池波先生がどれだけ悲惨な状況でも、破天荒に明るく飄々と生きてこられた姿に沢山のことを教わった気がします。大変なことがあっても受け流し、目の前のことに真摯にのぞみながら(ここがポイントかな?!)、自分のやりたいことを大いに楽しむ!そうすれば、だんだんと道は整えられていくのかもしれませんねぇ。2016/05/03