内容説明
関ガ原の後、石田三成の義弟の妻だった真田幸村の実妹の於妙(おたえ)を娶り、睦まじく添いとげた滝川三九郎。その、運命に逆らわずしかも自己を捨てることのなかった悠然たる生涯を描いた表題作。父弟と袂を分かって家康に仕え、信州松代藩十万石の名君として93歳の長寿を全うした真田信之ほか、黒田如水、堀部安兵衛、永倉新八など、己れの信じた生き方を見事に貫いた武士(おとこ)たちの物語8編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とん大西
136
人生の勝者か敗者か-いやいや、それらを超えた男の生きざまというべきか。修羅場に真摯に向き合った武士どもはやはりカッコいいのです。司馬さんの「播磨灘物語」でも鮮やかな黒田官兵衛の出処進退。本作では老境に差し掛かった官兵衛の明鏡止水ぶりが水際だっていて爽快。幸村と信之-真田兄弟のドラマチックな人生はもはや説明不要。大河をなぞるように楽しめました。表題作「武士の紋章」の主人公の滝川三九郎のことは知らんかったょ。世は戦乱から泰平へ。流れに身をまかせながらも己れを貫く自然体。三九郎、そのダンディズム、天晴れです。2021/04/24
Aya Murakami
97
地元図書館の(多分朝ドラに合わせての)牧野富太郎特集の棚の本。 牧野富太郎に限らずまさしく男の戦いという短編集。全体的にいうと徳川家に振り回されている主人公多め…かな?滝川三九郎の名前ははじめて聞きました。真田太平記にも出てくるらしいのですが、いつか読んでみたい。 牧野は尾瀬でのやらかしは意外にも描写されてなかったです。学者とはやらかす職業なのです。2023/03/24
Die-Go
74
表題通り、男の生き方の定型をこれでもかと見事に描いている。「黒田如水」「滝川三九郎」「真田信之」「真田幸村」「堀部安兵衛」「永倉新八」「三根山」「牧野富太郎」の八編。最後の二つが現代の人を描いている点が出色。ただ、あまりに短編過ぎて物足りなさがあるのも否めない。池波正太郎はもう少し長い文章の方が面白いのかもしれない。★★★☆☆2016/09/16
財布にジャック
65
真田太平記を読み終えたばかりなので、滝川三九郎の「武士の紋章」、真田信之の「三代の風雪」、真田幸村の「首討とう大坂陣」を目当てに読み始めましたが、いきなり初っ端から私の大好きな官兵衛(黒田如水)の短編「智謀の人」が載っていてテンションが上がりました。そして新選組の永倉新八の人生をたったの13頁でダイジェストしてくれたような「新選組生残りの刺客」も新選組ファンの私には堪らない作品です。しかし、なんといっても四十七士の一人の堀部安兵衛の「決闘高田の馬場」が一番良かったです。思わぬ拾い物でした。2011/07/03
はらぺこ
61
黒田如水~牧野富太郎まで幅広い時代の武士の短編集。因みに2人は近代・現代の人で力士と植物学者です。 真田太平記を既読なので、真田関係の話の微妙な違いに少々戸惑った。 恥ずかしながら赤穂浪士は粗筋しか知らないので『決闘高田の馬場』は読めて良かった。 『牧野富太郎』は映画かスペシャルドラマになりそうな人でした。今なら『ゲゲゲの女房』とか『まぼろしの邪馬台国』みたいに奥さんが主人公でしょうね。2011/05/22