内容説明
1930年代、大恐慌時代のアメリカ。映画監督になる夢を抱いて青年はハリウッドにやってきた。しかし現実は厳しく、エキストラの仕事にもあぶれ、ドラッグストアのバイトで小銭を稼ぐのが精いっぱい。その彼が出会ったのが、テキサスからきた女優志望の女の子。2人はペアを組んでマラソン・ダンス大会に参加することに。これは1時間50分踊って10分間の休憩を繰り返し、最後の1組が残るまでひたすら踊り続ける過酷な競技だ。大会を渡り歩くこの競技のプロに、逃亡中の犯罪者、家出娘など“わけあり”の参加者も。経過時間が800時間を越え、残りが20組に絞られたとき……。競技中に発生する様々な人間ドラマ、若者たちの希望と絶望を巧みな構成で描いたアメリカ小説の傑作。シドニー・ポラック監督、ジェーン・フォンダ主演の映画化《ひとりぼっちの青春》でも知られる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
巨峰
56
1930年代アメリカ。ダンスマラソン。何十日間最後までダンスを続けることができたペアが優勝。死なないまでもおかしくなっていく貧しい若者たち。それをみて、娯楽心を満たすセレブ。これ、人の人生を見世物にするのって、今のテレビ局に似ている。2024/03/24
syaori
41
結末は最初に示されます。「起立/しなさい」という遠い声とともに過去の彼が立ち上がり回想に入る導入から引き込まれました。彼が語るのは、映画の仕事にありつこうとしていたハリウッドでグロリアと出場したダンス・マラソンについて。物語が進むにつれて途中に挟まれる現在からの声が大きくなっていき、グロリアの言葉は厭世観を増していき、彼らがぐるぐる踊りながら向かう結末まで息を詰めるように読みました。最後のタイトルに繋がる一言、廃馬は撃つもんじゃないんですか?」がとても効いています。本当に彼に「神の憐憫があらんことを…」。2017/03/15
りー
38
大恐慌時代のアメリカ。カップルが手錠で手足を繋ぎ、参加者が最後の一組になるまで、一時間に十分程度の休憩を除いて二十四時間踊り続けるマラソン・ダンス。そんな嘘みたいな現実を舞台装置に、ありもしない希望をそれとわかりながらも求めて迷走する一組の男女を描いた、夢も希望も、金も救いも愛もない、ないない尽くしの小説が本作。付き合うとめんどくさいであろうペシミストのヒロイン、グロリアの呟く「わたしは生きることに飽きて、死ぬことがこわいのよ」は当時のアメリカよりも今の日本にこそ相応しいセリフなんじゃなかろうかね。2016/05/28
藤月はな(灯れ松明の火)
30
大恐慌後のハリウッドで大金欲しさに最後の一組になる迄、踊り続けるマラソンダンスに参加した若い男女。閉塞感が募る現代だからこそ、読まれる本ではないだろうか?日々を生きる為の金を稼ぐ為、時間を売って心を失くして馬車馬のように働いても切り捨てられ、顧みられない資本社会。それでも生きられるのは更なる絶望に叩き落す希望が残っているから。それを知る者はグロリアの語る、生きたいと思っているのに突然、ふっと湧いてしまう突然、命を捨ててしまう虚無感に共鳴してしまう。挟み込まれた判決文から分かる現実の絶望に顔を臥せるしかない2015/07/23
かわうそ
27
パルプノワールのような簡潔でドライな文体がかっこいい。心理描写が少なく冒頭の出来事に至る過程がスッキリ納得できるわけではないけれどむしろそれがいいところ。2015/06/15