内容説明
あの人は資本主義をやり直そうとしている!
新国立競技場の工事現場で働く中谷は、不思議な老人と出会う。老人はいかにも肉体労働には向いておらず、仕事をクビになるが、現場を去る直前、翌日の競馬の大穴馬券を中谷に託していた。老人が姿を消した直後、工事現場では爆破事件が起こり、翌日馬券は見事的中する。
5000万円の現金を手にした中谷の前に、再び老人が現れ、彼が開発した市場予測システム「エアー」の代理人として、日本政府との交渉窓口となるよう、中谷は依頼される。
「エアー」は世の中に渦巻く人間の感情を数値化して、完璧な市場予測を可能にするシステムで、それは政府が握るビッグデータと結びつくことで、国家の予算を潤すほどの巨額な利益をもたらすものだった。
謎の老人の代理人として、政治家や官僚たちと交渉を重ねる中谷だったが、「エアー」供与する見返りとして、福島の帰還困難地域を経済自由区として、自分たちに運営を任せるという要求を突きつけるのだった。
現代日本が直面する難題をつまびらかにし、圧倒的なスケールで描く近未来経済サスペンス小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ナミのママ
70
日本政府にまで食い込む市場予測システム「エアー」ってなに?と気になっていた。工事現場でネコ(手押し車)を押す老人の話からどうやってつながるのか。え?ええっ!という展開で話はどんどん膨らむ。2015年発売だが福島の帰還困難区域をはじめ、日本経済の低迷、アメリカとの関係など現実の部分に空想がぶち込まれる。帯に「近未来経済サスペンス小説」とあるがまさにその通りだ。プーッと膨らんでシューッとしぼんで終わるかと思われたこの作品、続編が発売になった。さて、日本がこれからどうなるか見届けたい。2024/10/10
納間田 圭
59
東京オリンピックのメイン会場新国立競技場の爆弾事件から始まる。あの”富岳”を超える夢のスーパーコンピュータ…その名はエアー。なんと…空気を読む。ここで言う空気とは…酸素とか大気のそれではなく、世界の人々の心…世の流れ。周囲の雰囲気から状況を察し未来を予知したり次に”なすべき事”を予想する。それって…けっこう金儲けになるらしい。膿んだ馴れ合い資本主義のやり直しも可能だという。円に代わる「カンロ」という名の独自の電子マネー。3.11の帰還困難地域を復興活性化するどころか…独立国家設立にも一役買うところが読み処2020/12/31
ぷりけ
48
せっかく『紙派』なので、本屋で推している作品は結構買ってみることにしていますが、当たり!でした。人間の感情を数値化して完璧な市場予測を可能にするシステム「エアー」。気付けば、政府・原発・経済そのものまで絡んでくる壮大なスケールの近未来サスペンス。謎のエアー製作者の意図を考えるもよし、主人公になりきって自分なら何を実行するか考えてもよし。文章も読みやすく、中々にワクワクさせていただきました。壮大な分、締め方が重要ですが、そこもとても良かった。2020/01/19
kinnov
45
手に取った時にタイトルと裏表紙のあらすじから想像した内容とは少し異なっていて、予想外の面白さを満喫できた。社会構築系(と私が勝手にカテゴライズしている)の作品が好きだ。『愛と幻想のファシズム』や『ハーモニー』のような。手触りこそ違え、この作品もそうした系図に列なる良作だ。主人公達の行動、システムが変えて行く社会、発生する既得権益層との軋轢、どれも地続きのリアルさで展開され最後まで目が離せなかった。震災の復興と言うテーマがどこまで有効か私には判断できないが、資本主義を終わらせるべきと言う志向には強く共感する2024/04/26
kk
41
自分の立ち位置と未来に思い悩む一人の男が、不思議な老人の知己を得て、金だけが全てではない世の中の実現を夢見ながら仲間と共に前に進もうとする物語。あり得ないような壮大なファンタジーですが、そこに込められたメッセージと願いには然るべく深いものがあるように感じました。読後感もとても良かったです。2020/12/27
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