自閉症のぼくが「ありがとう」を言えるまで

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自閉症のぼくが「ありがとう」を言えるまで

  • ISBN:9784864104852

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内容説明

*本文「幸せになる秘訣」より抜粋*

自己憐憫におちいって身動きがとれなくなったことが、どれほどあっただろう。
陽気でいるよりも、みじめでいるほうがずっとかんたんだ。
ポジティブでいるよりも落ちこんでいるほうがずっと楽だ。
人生が厳しいときにポジティブでいるためには努力が必要だけれど、
落ちこむためにはまったくなにもしなくていいのだから。

ひとりが落ちこむと、まるで伝染病みたいに、まわりのみんなも落ちこんでしまう。
だから自分の身を嘆きがちなぼくたちは、せめてまわりの人にやさしくしなければ。

どうすれば自己憐憫を乗りこえられるだろう?
より楽な生活をすればいいというわけじゃない。ぼくのおばあちゃんは
ものすごくたいへんな生活をしているけれど、とても陽気な人だ。
ことの大部分は「期待」と関係しているのだと思う。
人生になにか「貸し」があると思っていたら、
いま手にしているもののありがたさはわからない。
ぼくはずっと、自分をふつうの子たちと比べていた。自分を嫉妬に閉じこめ、
自分だけが人生を楽しむチャンスを逃していると思っていた。
ふつうの子だって完璧な人生を送っているわけじゃないということが
わかっていなかった。
彼らはふつうの頭脳を持っていたかもしれないけれど、たぶんぼくには、
家族やファイトなど、彼らが持っていないものがあった。
自分の幸運に気づけば、自分の財産のありがたみがわかる。
ぼくは、コミュニケーションができることの幸運をかみしめている。
これをできて当然のことだとは思わない。

「この病気であることがすべて悪いわけじゃない」
このことを心に刻んで、自己憐憫と戦うのがぼくの仕事だ。
認めたくはないけれど、自閉症はぼくにいいことももたらしてくれた。
沈黙の世界で、ものごとを深く考えることを学んだ。
まわりの人たちとその感情を観察して理解することを学んだし、
この病気がすべての終わりじゃないこともわかった。
取り組むことができるとわかっている難題にすぎないのだ。
幸せになる秘訣は、自己憐憫をやめることだ。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

ヒラP@ehon.gohon

23
自閉症の子どもたちと関わっていて、これほどの衝撃と感動を覚えた書籍は多くない。普段、まともにコミュニケーションが取れない彼らにも、これだけの感性と、行動とは裏腹の姿があるのですね。 これからも関わっていく自分に、やるべき事の啓示を受けたような気がします。2019/11/26

ケイプ

23
以前読んだ東田直樹さんの本にも共通する部分がありました。自閉症の彼が彼の言葉で彼自身のことを語っています。自分の意思を伝えたいのにその手段が見つからない、伝えられないというもどかしさはどんなに彼を苦しめていたのだろう。「自閉症というのは運動能力の障害であって、知的障害ではないのです。」彼の言葉気づかされるものがあります。2017/06/29

Natsuko

17
アメリカ人の著者の苦悩と活躍、世界に与えた影響は、東田直樹さんと重なる。本著はより専門家や現場スタッフを立ち止まらせると思う。まだまだ自閉症の研究は途上であるがコミュニケーション獲得の可能性の大事さを痛感する。以下メモ。脳と言葉・運動の回線がつながりにくいアプラクシア(失行)。現実から逃げる自己刺激行動(スティム)。人=モノではなく不安により人と関係を持てない。人の「色」が見える(信頼は青いオーラ)、音符が目に見える共感覚。ABA(行動療法)への否定。自分の体を感じる固有受容感覚。一瞬現れる本音の表情。2020/03/16

LIBRA

8
自閉症の本人の著書本。自閉症とは?知っているようで、全く理解していませんでした。知的障害だとばかり思っておりました。 理解をしていることを表せない。運動の障害でした。筆者は、pc入力が出来る様になって本当に良かったです。これは、自閉症を知らない多くの人に読んで頂きたいです。2017/05/11

aaaaki

6
自閉症の方の「真実=(心の内)」が分かる一冊。心の中では、十分に理解していることを幾度も繰り返して教えられる苦痛。馬鹿にされる苦痛。"理解できない"のではなく、"相手への伝え方を知らない"だけなのに。東田直樹さんの著書と類似する点がいくつも見受けられ、私たちがどれほど「自閉症」の方々に偏見の塊で見てしまっているのか。"普通"に生まれて、"普通"に話せて、"普通"に生活できる私たちは彼らにどれほど愚かな行為をしてしまっているのか。彼らの声が届かないのではなく、私たちが聞きに行かなければならない。2016/11/22

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