ちくま学芸文庫<br> 初版 金枝篇 上

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ちくま学芸文庫
初版 金枝篇 上

  • ISBN:9784480087379

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内容説明

「肘掛椅子の人類学」と断じ去るのは早計だ。ただならぬ博引旁証に怖じる必要もない。典型的な「世紀の書」、「本から出来上がった本」として、あるいはD・H・ロレンス、コンラッド、そして『地獄の黙示録』に霊感を与えた書物として本書を再読することには、今なお充分なアクチュアリティがあろう。ここには、呪術・タブー・供犠・穀霊・植物神・神聖王・王殺し・スケープゴートといった、人類学の基本的な概念に関する世界中の事例が満載されているだけでなく、資料の操作にまつわるバイアスをも含めて、ヨーロッパ人の世界解釈が明瞭に看取できるのだから。巧みなプロットを隠し持った長大な物語の森に、ようこそ。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

zirou1984

50
膨大な世界各地の民族の風習を整理分類し、その行事や習わしの共通性を明らかにしようとした民俗学の名著は、とにかく想像力を掻き立てられる面白さに満ちていた。個々の事例も興味深く、特に2章における王とタブーの話が印象に残っている。曰く、各地で王とは神の代弁者として権力を持つものの、代弁者であるが故に少しでも身体的不具の予兆があれば殺されて新たな王を立てる習わしがあったとのこと。また神聖であることと不浄であることはタブーという点で根源的に同一であり、そこに論理的整合性が隠されているという指摘には感心させられた。2015/01/03

syaori

49
ターナーの「金枝」。そこに描かれた森は古代、奇妙な悲劇の舞台となった場所。折ってはならない木の枝を折り「森の王」を殺した者が新たな王になる、この残酷な風習は何なのか?この疑問に答えるために森の「王」の称号を追うことから始まる本書は、示される世界各国の神話や伝承・風習の数々が面白く、それに気を取られていると何を追っていたのか分からなくなってしまいそう。祭司でもあった王たちを守り縛るタブー。樹木の霊(とその化身とされる人間)について回る死と再生の儀式。アリキアの森の謎に近付いているという高揚感とともに下巻へ。2017/09/26

内島菫

28
アリキア(イタリア)の祭司職をめぐる掟を考察するための膨大な研究ノートといった趣。この祭司は「森の王」とも呼ばれ強大な権限を持つが、次の祭司を志願するものは、聖なる樹の枝(金枝)を折りとったうえで、祭司を殺した後にその職につくことができる、という掟のもとにある。上巻では、人の姿を取る神や樹木崇拝、人間の中にさらに小さな人間が入っているという古代人の魂観、王と祭司のタブー、神(聖なる王/樹木霊)殺し(死神の追放)に関する世界各地の風習を網羅する。共感呪術(例えばスマトラの奥地で行われているという、2020/03/03

かふ

20
金枝とはの宿り木(やどりぎ)のことで、この書を書いた発端が、イタリアのネーミにおける宿り木信仰、「祭司殺し」の謎に発していることから採られた。日本の天皇=神についても出ているが大国主や武将(御上様)を天皇と一緒にするなど誤った解説も見受けられる。 それだから駄目だというレビューを読んだがそういうことではない。一神教の神に対しての宿り木の神なのだ。接ぎ木される神の思想は、日本でも例えば古事記で描かれる日本神話の神に民間信仰の神が重ね合わせて、多神教であるはずの神道が皇室神道に置き換わる。2022/04/11

マーブル

12
衰えた祭司や王を殺し新たにその座に就くことを繰り返すイタリアの風習の謎を解くため、世界中の未開民族に関する研究や各地の神話を紐解いていく。研究者でない身であればその情報の膨大さに触れるだけでも楽しく読むことができる。祭司や王の宗教的、呪術的意味合いが強く、まだ神と人間の間の隔たりが少ない頃であれば、自然に対する影響力を信ずる力は甚大となる。祭司らの力で平和・安寧・豊作等が維持され、その力が衰えることは彼らにとって死活問題であり、決して許されることではない。その衰えが悪い影響を与える前に殺し代替わりを行う。2023/11/19

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