内容説明
若き仏教僧の懊悩を描いた筆者の自伝的巨編。
恥ずかしがりのくせに強がりな十九歳の仏教僧・柳。
大東亜戦争へと向かう昭和10年頃の騒然とした時代を背景に、性と政治と宗教という相容れないテーマに心と身体を悩ます若き仏教僧の悲喜こもごもを描いた長編小説の上巻。
寺の子として生まれ育った武田泰淳の自伝的な大作であり、筆者の病気により未完にも拘わらず第5回日本文学大賞を受賞した“第一次戦後派作家の巨人”の代表作の一つでもある。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
tsukamg
6
仏教における罪が、快楽の有無を閾にして考察されている。主人公である柳のまわりに存在する女たちは、現実的な存在ではなく、お題に立ち向かうために柳が創り上げた観念上の存在みたいに感じられる。2021/02/28
0
あまりにも、あまりにも「異様」な小説である。この作品が、リンチ共産党事件の時代を舞台にしており、そのような時代に、坊主でありながら社会主義に夢を託すという半ば自伝的な色合いが濃い作品だが、「快楽」=「性欲」の問題が粘りつくように絡んでいる。武田泰淳の小説は、書き出しから速度を決めていくような作品(例えば、『蝮のすえ』『貴族の階段』)のように、長距離ランナーというよりは、短距離ランナーな印象を持っている。そして、それは『富士』においても変わらない。しかし、『快楽』は「読ませる」のである。2016/12/04
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