河出文庫 ヘタな人生論より万葉集

著者名：吉村誠【著】

河出書房新社（2016/10発売）

• ISBN：9784309411330

内容説明

宮仕えのつらさ、酒飲みへの共感、老年期の恋への戸惑い、伴侶を失った悲哀……。今と変わらぬ心の有り様が素直に詠みこまれた『万葉集』から、生きるヒントを読みとる。

感想・レビュー

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[白としろ]

世間(よのなか)は 空しきものと 知る時し いよよますます 悲しかりけり。験(しるし)なき ものを思はずは 一杯(ひとつき)の 濁れる酒を 飲むべくあるらし。移り行く 時見るごとに 心痛く 昔の人し 思ほゆるかも。うらうらに 照れる春日に ひばり上がり 心悲しも 独りし思へば。うつせみは 数なき身なり 山川の さやけき見つつ 道を尋ねな。世間(よのなか)を 何に譬へむ 朝開き 漕ぎ去にし船の 跡なきごとし。

2019/12/31