内容説明
「現実から逃避」するのではなく,むしろ「現実へと逃避」する者たち──.彼らはいったい何を求めているのか.戦後の「理想の時代」から,70年代以降の「虚構の時代」を経て,95年を境に迎えた特異な時代を,戦後精神史の中に位置づけ,現代社会における普遍的な連帯の可能性を理論的に探る.大澤社会学・最新の地平.
目次
目 次
序 「現実」への逃避
Ⅰ 理想の時代
1 敗戦という断絶=連続
2 理想の時代
3 死者の来訪
Ⅱ 虚構の時代
1 二つの少年犯罪
2 虚構の時代
3 理想から虚構へ、そしてさらに……
Ⅲ オタクという謎
1 オタクという現象
2 アイロニカルな没入
3 社会性と非社会性
Ⅳ リスク社会再論
1 二つの「下流」
2 リスク社会とは何か
3 自由は萎える
Ⅴ 不可能性の時代
1 不可能性の時代
2 家族の排除
3 反復というモチーフ
Ⅵ 政治的思想空間の現在
1 「物語る権利」と「真理への執着」
2 信仰の外部委託
3 〈破局〉の排除
4 羞恥心をめぐって
5 無神論への突破
結 拡がり行く民主主義
あとがき
主要参考文献
注
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
71
戦後の社会状況をうまく分析してくれています。私は見田宗介三の著作も若干読みましたが大澤先生のほうが実例などを多用してくれて私には理解しやすく感じました。「砂の器」「飢餓海峡」などの作品や世間を騒がした事件などの分析も私にはすんなり受け入れられました。2015/09/12
harass
65
2008年の社会評論。見田宗介による戦後の時代区分、理想→虚構から続く現代は「不可能性」の時代であると著者は論じる。なにか既読感があると思ったら佐々木敦の本で引用されていた。こういう本を続けて読んでいると、要するに高度な「三題噺」だと分かってくるが、解説力の高さや鋭く読みがいのある論考がいくつもあり新書であるが、充実した読書だった。飛び抜けた書き手だと素直に感心。ただまあ「第三者の審級」は便利なワードだがこの著者の他の本でも当たり前のように頻出してくるのにちょっとなんだかなとも。2017/07/27
おたま
55
見田宗介の提起した、戦後を「理想の時代」「虚構の時代」と区分けする見方を継承し、さらにその先に「不可能性の時代」を見てとろうとする試み。「理想の時代」「虚構の時代」について書かれた部分は比較的分かりやすい。しかし、大澤真幸が新しく提起する「不可能性の時代」というのが十分理解できない。「オタク」や「リスク社会論」を手掛かりにして「不可能性の時代」について素描していくが、その例から推論して時代の核心を確定していくのに付いていけなくなる。2024/07/15
ころこ
37
「理想の時代」における情報量とテンポの良さに驚かされます。情報の裏にある著者の普段の読書量とその理解力、それを表現する緊張感のある文章の艶と後半に回収される布石の打ち方をみても、上質の戦後文化史として読む価値があります。本書における論点は現在の「不可能性の時代」の分析ですが、なぜそれが難しいのかといえば、その前の「虚構の時代」がいつから始まり、どの様な時代なのかの分析が難しいからです。本書では、「不可能性の時代」の入り口を「理想の時代」の永山則夫と対比させた酒鬼薔薇事件に負わせ、返す刀で「虚構の時代」の説2020/05/31
yumiha
25
各章においての社会的状況の分析は納得しながら、示唆をもらいながら読んだ。見慣れない「第三者の審級」ちゅう概念も、読み進むうちに理解できた。ただ、結論の最終章で提起された、「緊密で小さな共同体」が、島宇宙のように無数にあり、それがランダムな線で繋がることによって、あるべき民主主義を遠望されていたことは、現代のグローバル社会ではありえんだろ~と思ってしまった。その小さな共同体にも、さまざまな人間関係・利害関係などが想像できるし、ランダムな繋がりのうちには、不幸な結果のまま終わる場合がある、と思ったので。2015/09/23
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