内容説明
プラハのユダヤ人街に住む宝石細工師の「ぼく」は、ある日、謎の人物の訪問を受け、古い書物の補修を依頼されるが、客の帰ったあと、彼について何も思い出せないことに気づいて愕然とする。どうやらその男は33年ごとにこの街に出現するゴーレムらしいのだ。やがて「ぼく」の周辺では次々に奇怪な出来事が…。夢と現実が混淆する迷宮めいたこの物語は、第一次大戦さなかに出版され、熱狂的に読まれたドイツ幻想文学の名作である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アナーキー靴下
87
夢と現実が混淆する迷宮めいた物語、との解説通り、ここはプラハのゲットーである、という想念だけが拠り所であるような、足元のおぼつかない幻想小説。読み始めは掴み所のなさに戸惑い、かつて熱狂的に読まれた、が不思議だったが、目眩く世界を彷徨ううち、神秘主義的な意味でのオカルトに引き寄せられつつも実践には至らない人々が疑似体験を求めて読んだのだろうか、と想像。それ程魅力的なうえ、綺麗な印象を胸に残し現実に戻ってこられる優良図書。何度読み返しても楽しめそうで、「海外小説 永遠の本棚」のシリーズ名は伊達ではないなと。2021/08/18
コットン
78
朔屋 兎乃さんのオススメ本♪第一次世界大戦中に出版されその頃の不穏な空気を体現するようで、また現在にも通じる人間の不安感を帯びた「ゴーレム」という幻想観念!2014/07/24
HANA
71
神秘小説。三十三年ごとに表れるゴーレム、過去を失った主人公の周りに表れる様々な怪異。ここでのゴーレムは普段我々が想像するような土製の怪物ではなく、象徴として扱われているのが特徴的。他にもカバラやタロットが作中にふんだんに使われているが、それらが何を象徴しているかは不勉強な僕にとっては難しすぎた。それらの要素が作中で渾然一体となって独特の文体と合わさると、深夜プラハのゲットーを当てもなくうろついている様な気分にさせられる。何となくゲットーの人々が共有する強迫観念から「都会の幽気」を連想させられた。2014/06/16
藤月はな(灯れ松明の火)
62
プラハのユダヤ人街、ヘルマフロディテ、謎の男によってもたらされた書物と貴婦人を巡る殺人事件、悪夢じみた幻覚、謎めいた地下の住人達。こんな影絵のように退廃的でゴシックなモチーフが散りばめられたならば読まずにはいられまい!物語も万華鏡のように模様を変えながらもその幻想的世界を魅せているのに感嘆します。アラン・ロブ=グリエの『消しゴム』のような構成を彷彿とさせながらモチーフはホフマンの『砂男』。ゴーレムとして処刑に誘われるぺルナートの記憶が掏り合わさった時、ゴーレムとして同一化されたという点が興味深かったです。2014/03/20
りつこ
43
ユダヤ人街ゲットーで記憶を失った男ペルナートがゴーレムに出会う。ゴーレムは不完全な自分自身なのかあるいは失った記憶の断片なのか自分の分身なのか。とにかくこのペルナートが終始怯えていて…恐ろしい告白を聞いたり事件に巻き込まれたりと相当ひどい目にあうのだけれど、後半になるとそのこと自体に意味がなくなってくるようで…。最後に彼が見た光景は要するに宗教的に解脱を遂げた、ということになるのだろうか。もやっとしか理解できなかったのだが、これが100年前に熱狂的に読まれたというのに驚く。2018/02/17
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