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内容説明
カトリックとプロテスタントの対立がつづくなか、実子殺しの容疑で父親が逮捕・処刑された「カラス事件」。狂信と差別意識の絡んだこの冤罪事件にたいし、ヴォルテールは被告の名誉回復のために奔走する。理性への信頼から寛容であることの意義、美徳を説いた最も現代的な歴史的名著。ヘイトスピーチ、ヘイトクライム、テロなどの暴力行為が世界各地で頻発し、罪なき人たちが諸悪の犠牲となっている21世紀の今こそ読まれるべき古典
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
153
寛容=Toléranceには、受け入れる心の広さとともに耐える意味も含む。それを否定する不寛容は、受け入れずカッとする、激昂するということになろうか。その不寛容が起こした「カラス事件」(息子の首つり自殺は父親による殺人として、父親は処刑された)をきっかけにヴォルテールは寛容の必要性を強く説いた。この著作は執政者側に向けたものだ。あくまでも神を信じるカトリック教徒でありながら、知性と冷静さ、公平な目で宗教や神を考え、宗教や宗派を理由に殺戮が行われる不正義を訴え、宗教を超えた融和を説く名著。まさに名著。2016/09/23
巨峰
61
カンディードが面白かったので、同じ古典新訳文庫のこの作品を読んでみた。この作品はカトリックとの対立の中で無実の罪で車裂きの刑に処されたプロテスタントの商店主のその家族の救済のために書かれたもの。キリスト教内での宗派ごとの争いは何千人もの死者を数世紀にわたって出す程の酷さだったそうですが、ギリシャローマの昔から他の宗教の事情まで引用して、寛容であることを説いた啓蒙書です。現在のフランスがテロの脅威にあいながらも、それだけでイスラム教徒を弾圧したりしないのはこういった過去の啓蒙から生まれた彼らなりの寛容だそう2016/12/12
翔亀
40
【ゲーテの時代13】ヴォルテールは本書を外せないと読友さんから勧められ「カンディード」に続けて読む。何といっても冤罪で死刑となった事件に対し、自ら立ち上がって世論を動かし無罪を獲得したというからすごい。本書はその運動の中で書かれたもの。このカラス事件は、カソリックとユグノーの対立の中で市民と裁判官の狂信により無実の人間を死刑(即時処刑)としたもの。ヴォルテールは宗教による迫害が続くフランス王国において寛容(この場合は宗教的許容といった感じ)の大切さを説く。王政を批判するわけでも宗教を否定するわけでもなく↓2021/02/05
kazi
31
1761年のフランスのトゥールーズで起きた「カラス事件」をきっかけにフランスの哲学者ヴォルテールが「寛容」というテーマについて書いたものです。『南仏ラングドック州の州都トゥールーズの布地商人ジャン・カラス(プロテスタント) の家の二階で、当夜の来客コベール・ラヴェスをまじえた夕食が終わると、長男マルク゠アントワーヌが食卓を離れて階下へ降りて行った。しばらくして次男ピエールが、客ラヴェスを送りに二人で降りたところ、彼らは首にロープを巻きつけた長男の死体を発見した。』2021/03/06
テツ
18
カトリックによるプロテスタントへの弾圧を糾弾し宗教的信仰的な見地から寛容さの大切さを説く。時代と筆者の立場を考えればクリスチャン的な思想信条がベースとなり思想が展開されていくことは当然だし、そうした本来同じ信仰をもつ者同士で互いに寛容であることを啓蒙するだけのお話に読めてしまえるけれど、まあ基本的には時代や場所を問わずに寛容さって大切だよなあ。他者を不快だと感じることは絶対にある。それをなくすことはできない。寛容さというものはそれを踏まえて理性によって培われるある種の技術なんだと思う。理性と知性は大切だ。2021/11/16
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