内容説明
私たちの行動をコントロールしているのは「自分の意識」ではなかった! 例えば衝突の危険をはっきり認識する前に、足は車のブレーキを踏んでいる。脳はたいてい自動操縦で動いており、意識は遠いはずれから脳の活動を傍観しているにすぎないのだ。だが、自覚的に制御することができないのなら、人間の行動の責任はどこにあるのか? 意識と脳の驚くべき働きを明かす最新脳科学読本。『意識は傍観者である』改題文庫化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
207
面白かったが、ピンカーその他の類書を多く読んでいたので、新しい知識は少なかった。人間の思考の多くがアクセス不能な領域の決定が組み合わされたもので、自由意志の及ぶ範囲は自覚しているよりもはるかに少ない。現在では基礎知識と言える。犯罪の処罰に関しては著者の意見に心では同意できるところもあるが、そのような法体系を構築すべきかどうかは筆者は否定的だ。スピード違反も飲酒運転も影響には個人差があるはずだが、だからといって筆者には反射神経や技能の個人差を法律に反映すべきと思えない。2018/05/20
KAZOO
120
脳の役割というものがよくわかります。無意識というのがその役割を表している言葉ではないかと感じました。ただこの本はちょっと難しく、と言って学術書というわけでもなさそうなのでもう少し訳とか内容をかみ砕いてくればという気がしました。2018/05/23
こばまり
63
なんてこったい。薄々勘付いてはいたがこう畳み掛けられてはお手上げだ。私の全てを司っているのは脳であって私でない。その営みの大部分にアクセス権すら持っていない。まさに映画「トゥルーマンショー」の世界だ。ワクワクしたり恐くなったり。凶悪で異常な犯罪は脳の機能障害に依るので考慮した法制度をとの説は理解はできるがモヤモヤが残る。このモヤモヤしている「私」とは何だ。2016/10/20
くも
30
脳は意識できる部分とそうでない部分、両方をつかさどる。意識だけですべてを支配することは出来ないようだ。意識はむしろ何かを決断するよりも、行われてしまった決断に追従するしかないようだ。様々な事例から脳の機能を解き明かしていく。脳機能から考える法制度に関しては、どう祝出来なかったが一理はあると思われる。2021/01/08
アドソ
26
前半は認知のゆがみや錯覚など、類書にもみられるような話題が並ぶが、決して退屈ではない。5章「脳はライバルからなるチーム」では、多様な刺激応答系のうちごく一部が意識に上ってくるというモデルによって理性と感情を説明しているのが興味深い。6章では精神障害の影響下で行われた犯罪に対し、責任を問うこと自体に意味があるかどうか、という問題。7章では一気にトーンが変わって、脳科学の今後と、それを人類の幸福のためにどう生かすかといった難問(たぶん著者はこれが一番書きたかった)になり、心なしか訳も少しぎこちない。2018/05/04